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小又山
雁戸山岳


【日時】 2003年10月4日(土)〜5日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 4日:曇り時々雨 5日:曇り

【山域】 神室連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
小又山・こまたやま・1366.7m・三等三角点・山形県
【コース】 西ノ又林道登山口
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/羽前金山、秋ノ宮、新庄、鳴子/ 神室山、鬼首峠、瀬見、向町
【ガイド】 分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、新編東北百名山(山と渓谷社)、山と高原地図「栗駒・早池峰」(昭文社)
【温泉】 大堀温泉・国民年金保養センターもがみ 400円

【山域】 蔵王連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
雁戸山・がんどやま・1484.6m・二等三角点・山形県、宮城県
南雁戸山・みなみがんどやま・1486m・なし・山形県、宮城県
【コース】 笹谷峠より
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/山形/ 笹谷峠
【ガイド】 分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、分県登山ガイド「宮城県の山」(山と渓谷社)、新編東北百名山(山と渓谷社)、山と高原地図「蔵王・面白山・船形山」(昭文社)

【時間記録】
10月3日(金) 20:15 新潟発=(R.7、鶴岡、藤島。R.345、狩川。R.47、新庄、R.47、大堀、野頭 経由)=
10月4日(土) =0:30 白川渓流公園キャンプ場  (車中泊)
5:50 白川渓流公園キャンプ場発=(西ノ又林道)=6:00 通行止地点〜6:33 発―6:47 小又山登山口―7:15 尾根取り付き―8:15 1110mピーク―8:49 越途ピーク―9:46 小又山〜10:16 発―11:03 越途ピーク―11:29 1110mピーク―12:03 尾根取り付き―12:25 小又山登山口―12:39 通行止地点=(西ノ又林道、野頭、R.47、松原橋、舟形、R.13、山形、R.286 経由)=17:20 笹谷峠  (車中泊)
10月5日(日) 6:36 笹谷峠発―7:03 関沢分岐―7:39 カケスガ峰南分岐―7:58 新山分岐―8:25 雁戸山―8:57 南雁戸山〜9:00 発―9:29 雁戸山―9:55 新山分岐〜10:11 発―10:31 カケスガ峰南分岐―10:36 カケスガ峰〜10:41 発―11:25 有耶無耶関跡分岐―11:37 笹谷峠=(R.286、山形、赤湯、R.113、大島、R.290、新発田、R.7 経由)=16:00 新潟着

 神室連峰は、山形県の北東部に、北は水晶森から南は杢蔵山まで南北25kmに渡って連なる山塊である。主峰は名前の取られている神室山であるが、最高峰は小又山である。小又山は、すっきりした三角形の山頂を持ち、付近の山からの展望でもひと際目立っている。
 蔵王連峰のうち、熊野岳から笹谷峠に至る山塊を北蔵王と呼ぶが、雁戸山は、その中心になる山である。南に並び立つ南雁戸山にかけて険しい岩稜を連ね、地元ではガンドウと呼ぶ鋸の刃のような姿が山名の由来になっている。

 この週末は、晴れマークが並んで登山日和かと思ったのだが、金曜日の昼間は時雨模様となって、青空と雨がめまぐるしく入れ替わった。高い所は雪の可能性が高いと思い、当初に予定していた北アルプス方面の山は諦めて、ここのところ続けている東北百名山の山に出かけることにした。登っていない山のうちから、紅葉の始まっていそうな神室連峰の小又山と蔵王・雁戸山を選んだ。
 東北の山へのルートも、何度も通ってお馴染みになっている。鶴岡から新庄に抜けて、大堀で国道と分かれ野瀬の集落に向かった。野瀬の集落からは未舗装の林道になったが、路面の状態は良かったので先に進んだ。ダムの堰堤周辺が白川渓流公園キャンプ場として整備されており、トイレや炊事棟、駐車場が設けられていたので、ここで夜をあかすことにした。
 翌朝車を進めると、すぐ先で、西ノ又林道が始まったが、ここからは未舗装の荒れた道になった。途中、伐採の貯木場があり、林道は、停止するとタイヤが空回りして動けなくなりそうなどろどろ状態になっていた。沢沿いの細い道を進んでいくと、道路に通行止めのロープが張られていた。この先は危険につき通行禁止とのことであった。小又山への登山口は、西ノ又登山口に加えて、白川林道の根ノ先登山口からの登山道が最近整備されており、林道を戻ればそう遠くはない距離であった。GPSで西ノ又登山口までの距離を確認すると1km程度だったので、ここから歩き出すことにした。この通行止め地点は狭かったため、車を方向転換してから、後からくる車の邪魔にならないように、路肩に車を寄せて停めた。
 沢沿いに歩いていくと、砂防ダムの堰堤があり、林道はここで終わった。堰堤の上流部は広河原になっており、中央部に細い流れが通っていた。対岸に大きな看板があって、登山道の入口は簡単に判った。沢の 徒渉は、水面下に並んだ踏み石を伝って、靴を少し濡らしただけで渡ることができた。もっとも、水量の多い春先や、降水時には、ここの 徒渉は注意する必要がありそうであった。
 杉林の中の、赤倉沢沿いの登りが続いた。登山道を夏草が覆っており、歩く妨げというほどではなかったが、少々うっとおしかった。沢の源頭部の斜面が近づいてきたところで、左手に曲がって尾根上への登りが始まった。つづら折りを交えた登りが続き、尾根上には直に上がることができた。枝尾根の登りは、一時緩やかになったが、1110mピークに向かっての急登が続いた。高度を上げていくうちに、周囲の木立の葉も色づき始めてきた。
 登りの途中は、汗がしたたり落ちて、長袖のTシャツ一枚になったが、1110mピークに上がると風が冷たく、山シャツを再び着込むことになった。前の週は、半袖Tシャツにもなっていたのだが、急に冷え込みが厳しくなってきた。1110mピークからは、一旦下りになった。前方に見える、すっきりしたピラミッド型の山頂が小又山のようであったが、まだ遠かった。
 稜線の周囲には、美しいブナ林が広がるようになった。朝日が差し込み、黄色く染まったブナの葉が輝いていた。しばらくは、緩やかな稜線歩きが続いた。
 軽く登って越途ピークに出ると、右手から根ノ先登山口からの登山道が合わさった。この分岐には六合目という標識が置かれていた。ここまで歩いてきた途中には合目標識は無かったので、根ノ先登山口に沿って設けられているようであった。歩き出してみると、思ったよりもすぐ先で七合目が現れて、小又山の山頂までは、そう遠くないことが判った。
 山頂が近づいてきた所で、一段登り切ると、笹原の向こうにピラミッド型の山頂が迫っていた。笹原の中に点在する灌木の茂みは、赤や黄に色づいていた。最後の登りの途中、息が苦しくなったのをごまかすために、足を止めて振りかえると、稜線は美しい錦の絨毯になっていた。夏にはお花畑となるのであろう草付きを登り切ると、小又山の山頂に到着した。山頂の小広場には、神室連峰最高峰小又山と書かれた山頂標識が立てられ、その背後には、火打岳が鋭角的な稜線を際だたせて、頭を持ち上げていた。
 風は、腰を下ろして休むには冷たかった。神室山を眺めながら休みたかったため、北に向かう縦走の下り口まで進んだ。なだらかな天狗森の向こうに、神室山が、肩をいからせた姿を見せていた。小又山は、すっきりしたピラミッド型の山頂を持つことから、朝日連峰の大朝日岳に似ている。神室山は、さしずめ以東岳といったところであろうか。二つの山の印象は、対称的である。神室山に至る雄大な稜線を見ていると、標高は及ばないものの、飯豊連峰に似た感じである。
 ビール片手に、紅葉の盛りの稜線をあかずに眺めた。雲が多めで、日の光が充分でないのが、写真撮影のために残念であった。この風景を眺めていると、今度は、神室連峰の縦走路を歩こうという気持ちが強くなった。神室山に続いて小又山に登ったのも、神室連峰のプロローグにしかすぎない。
 カメラを首に下げて、写真を撮りながら下山を続けた。1110mピークが近づくにつれて、紅葉の色も充分ではなくなった。空が暗くなり、雨が降り出した。通り雨のようなので、雨具を着ずに歩き続けたが、カメラの撮影タイムは終わりになった。沢沿いの道まで下ると、夏草についた滴で、ズボンはずぶぬれになってしまった。
 雨に降られたことは別として、まずまずの天気予報が出ている紅葉の山で、誰にも合わなかったのは、不思議であった。おかげで、山を独り占めで楽しむことができた。
 車に戻り、国道の反対側にある大堀温泉へと向かい、雨で冷えた体を温めた。
 翌日の蔵王雁戸山のために、山形まで移動する必要があった。夕食をとったり、買い物をしたりで、山形に着いたのは、夕暮れ近くになっていた。
 山形から仙台に抜けるR.286は、山形自動車道の笹谷トンネルが、現在の国道区間で、峠越えの道は旧道扱いになっている。笹谷峠への道は、カーブが連続し、車のすれ違いには注意する必要があるものの、意外に通行量は多い。夕日に染まった笹谷峠に到着してみると、同じく野宿の車が一台停まっていた。
 笹谷峠の駐車場は広く、トイレも設けられている。ここでの野宿は、三度目になる。一度目は、峠を挟んで雁戸山と向かい合う神室岳に登った時で、二度目は、昨年の8月に雁戸山に登ろうとした時である。この時は濃霧で諦めてしまい、今回は再挑戦ということになる。実際には、今年の7月末に蔵王温泉に職場の旅行の際に登ろうとしたものの、雨のために予定変更しているので、雁戸山は、相性の悪い山ということになる。果たしてと云うべきか、夜中に雨音で目が覚めた。
 翌朝は、雨は止んでいたが、ガスがかかっていたため、天気の回復を待ってのゆっくりとした出発になった。登山者の車が到着するのと入れ違いの、先頭での歩き出しになった。駐車場前から始まる、マイクロウェーブ基地へ通じる簡易舗装の道路が、雁戸山への歩き出しになる。少し歩いた所で右に入ると避難小屋があり、ここから登山道の歩きが始まった。しばらく登った所でマイクロウェーブ基地の横を通過したが、舗装道路の終点付近からも登山道に入ってくることができるようであった。送電線の巡視路もあり、道は複雑に入り込んでいた。
 雑木林の中の見通しの利かない登りが続いた。歩き出しの時は寒さでフリースを着込んでいたが、さすがにこれは脱いだものの、山シャツは着込んだままであった。手袋を付けたのも、シーズン最初であり、毛糸の帽子も次の山行のためには探し出しておく必要がありそうであった。高度を上げていくにつれて、紅葉も進んでいった。
 関沢からの登山道を合わせた後も、樹林帯の中の道が続いた。カケスガ峰との分岐に出て、ようやく登山道の雰囲気が変わった。カケスガ峰は、小高い丘で、その上に建物が見えていた。帰りは、カケスガ峰を通って下山することにして、まずは雁戸山を目指した。この分岐から先は、前山の下を通過するトラバース道になり、展望が開けた。谷間の斜面は、紅葉に染まっていた。ガスではっきりしないが、前方に聳えるのが雁戸山のようであった。
 少し歩きづらいトラバース道を終えると稜線の上に出て、ここは、新山からの登山道も合わさるT字路になっていた。前方には、岩峰がそそり立ち、ガスで上部が隠されているのも、余計に険悪なムードを増していた。覚悟を決めて、岩場の登りに取りかかった。冷たい風が岩場を通り抜けており、平地を見つけてザックを下ろし、再びフリースを着込むことになたt。岩場は取り付いてみると、急な割にはステップがしっかりしており、登るのは難しくはなかった。ただ、岩が昨晩の雨で濡れているので、慎重に歩く必要があった。岩峰の上に出て登頂かと思ったが、雁戸山の山頂はさらに先であった。ピラミッド型をした山頂めざして、泥付きの斜面を固定ロープの助けもかりて登ると、雁戸山の山頂に到着した。
 山頂は小広場になって、山頂標識が立てられていた。三角点は、盤石が露出しており、三角点標石は脇に傾いて置かれていた。これは埋め直す必要があるのは確かなので、国土地理院に連絡してみようか。展望の良い山頂らしいが、ガスのために展望はまったくなかった。
 時間も早いので、南雁戸山を目指すことにした。山頂の少し先で笹雁新道が左に分かれた。ここからは、鞍部までえ、標高差100mの一気の下りになった。丁度ガスが切れて南雁戸山の山頂が顔を覗かせたが、登り下りがきつそうで、一瞬止めようかとも思ったが、谷間の紅葉に誘われるままに先に進むことにした。
 南雁戸山は、双耳峰になっている。1486mの標高点の書かれている手前のピークが南雁戸山の頂上かと思ったが、ここにはなにもなく、先のピークに南雁戸山と書かれた山頂標識が置かれていた。ここには、山の神と書かれた石碑も置かれていた。ガスは消えてくれそうもなかったため、引き返すことにした。
 雁戸山への登り返しに息は切れたものの、往復には、見た目で思ったほどの時間はかからなかった。ここまでは誰にも合わなかったのだが、雁戸山の山頂に戻ると、数組の登山者が休んでいた。南雁戸山までは行かないようであった。岩場の下りもあるので、新山まで下ってから大休止をとることにした。カメラを下げて、紅葉の写真を撮りながら下った。何組もの登山者とすれ違うようになった。
 新山との分岐に戻ったところで、ひと休みすることにした。岩場に取りかかる登山者を見上げながら、ビールを飲んだ。再び歩き出してトラバース道を歩いていると、ガスが上がってきた。振り返ると、雁戸山の山頂が、岩峰を門番のように従えて聳えていた。
 分岐からカケスガ峰へはひと登りであった。カケスガ峰の山頂には、以前はマイクロウェーブ基地があったようであるが、周囲の展望が広がっていた。雁戸山や、笹谷峠を挟んで向かい合う神室岳や大東岳を良く眺めることができた。足を止めて、しばし見入った。
 カケスガ峰からは、登りのコースと変わらない、見通しの利かない道が続いた。下りもそろそろ終わりかなと思うとT字路に出て、笹谷峠の駐車場へは左に曲がった。ここらに、有耶無耶の関跡があるはずであったが、馬頭観世音と書かれた石碑が傍らに置かれていたものの、はっきりしなかった。右に曲がってもう少し先立ったのか、有耶無耶のままに終わった。
 駐車場へという標識に従って、斜め方向に下っていくと、歩き始めの管理道に飛び出した。この入口には標識は見あたらず、登山地図にも載っていない道であった。宮城県側の登山道を登りに使おうとすると、避難小屋を起点にすれば良いのかもしれないが、ちょっと判りにくいかもしれない。
 駐車場に戻ると、駐車場に入りきれない車が路上駐車で並んでいた。紅葉の始まりとあって、雁戸山と神室岳の登山者を会わせると、相当な数になったようである。

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