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高坪山


【日時】 2002年11月2日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 曇り時々みぞれ

【山域】 蔵王山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
大山・おおやま・523.7m・四等三角点・新潟県
高坪山・たかつぼやま・570.5m・二等三角点・新潟県
【コース】 登り:虚空蔵コース、下り:蔵王コース 荒島城コース往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/中条、小国/坂町、中条、越後下関、安角
【ガイド】 分県登山ガイド「新潟県の山」(山と渓谷社)、新・新潟ファミリー登山(新潟日報社)、新潟花の山旅(新潟日報社)

【時間記録】 7:40 新潟発=(R.7、十文字、R.113 経由)=9:05 登山者用駐車場〜9:16 発―9:23 登山道入口―9:29 虚空蔵平分岐―10:11 奥の院入口〜10:16 発―10:23 虚空蔵峰―10:39 大山三角点ピーク―10:48 尾根屈曲点―11:25 荒島城コース登山口―11:29 車道分岐―11:32 荒島城コース登山口―12:13 尾根屈曲点―12:21 大山三角点ピーク―12:33 虚空蔵峰―12:56 飯豊連峰見晴台―13:04 三方境―13:11 高坪山―13:22 黒川分岐―13:29 休憩所―13:43 沢―13:46 虚空蔵平分岐―13:50 登山道入口―13:55 登山者用駐車場=(往路を戻る)=16:40 新潟着

 北は荒川、南は胎内川に挟まれた、日本海の海岸線に沿って南北に延びる低山帯を蔵王山塊と呼ぶ。高坪山は、この山塊の最高峰である。高坪山は、荒川町梨木からと黒川村蔵王からの登山道が、それぞれ周遊コースとして歩くことができることから、ハイキングの山として親しまれている。最近、荒川町梨木からの登山道として、虚空蔵コースと蔵王コースに加えて、荒島城コースが整備されて、さらに変化に富んだ山歩きができるようになった。
 せっかくの三連休ではあるが、山からは雪の頼りが届き、高い山のシーズンは終わってしまったようである。土曜日の天気予報も、曇り時々雨というもので、藪漕ぎは少々辛そうであった。登山道のある低めの山を考えて、ひさしぶりに高坪山に出かけることにした。高坪山には、1994年4月23日と1998年11月26日に、それぞれ梨木登山口と蔵王登山口から登っている。新しい登山道ができたと小耳に挟んでおり、そのコースの確認もしたかった。
 R.7を北上し、中条を過ぎた十文字交差点でR.113に進むと、右手に高坪山登山口の標識がある。右折すると、あらかわ総合運動公園が現れる。ゲートボール場、テニスコート、サッカー場、野球場を設けた広大な施設で、以前に来た時と付近はすっかり様変わりしていた。車道を進み、山に近づいていくと、登山者用駐車場に到着した。駐車場には、高坪山の登山道の案内板も立てられていた。
 昨年の12月30日に、納めの山として高坪山に登りにきて、この駐車場まで入ったものの、みぞれまじりの悪天候で、山小屋のある大峰山に行く先を変更して引き返したことがある。今回も、すっきりしない天気であったが、なんとかもっていてくれた。
 駐車場からは、しばらく車道歩きが続いた。車道が左に曲がって牧草地へ向かうところで、右手に未舗装の林道が分かれており、ここが登山道の入口であった。帰りに車のメーターで計ってみると500mの距離があった。登山者の少ない時期なら、入口付近に路上駐車も可能であろうが、準備運動と思って、駐車場から歩いた方が良いであろう。林道を進むと、すぐ左手に、虚空蔵山荘が建てられているが、鍵がかかって一般には開放されていない。杉の植林地を抜けていくと、僅かな歩きで虚空蔵コースと蔵王コースの分岐のある虚空蔵平に到着する。
 虚空蔵ルート90分、蔵王ルート60分と書かれており、どちらのコースを先に登るか迷ったが、虚空蔵コースから登ることにした。虚空蔵コースに入るとすぐに奥の院建立の記念碑が置かれており、ここから急な尾根の登りが始まった。登山道は、溝状に抉られて歩きにくい所もあった。ひと登りすると、尾根の緩やかな登りが続くようになった。尾根の周囲の雑木林も美しく紅葉していた。先週までは、紅葉を求めて、少しでも高い山を目指していたのだが、里山でも紅葉を楽しむことのできる季節になったようである。天気が良ければ、せっかくの紅葉の季節であることから、ハイカーで賑わうところであろうが、独り占め状態の山のようであった。
 稜線上の虚空蔵峰まであと僅かというところで、奥の院の標識が現れた。先を急ぐわけでもないので、寄り道していくことにした。やめとけば良かったかと思ってしまう程の急坂を下ると、谷間に石の鳥居と祠が置かれていた。祠の中には、賽銭箱と丸い石が置かれていたが、これがご神体なのだろうか。登山道まで登り返すのに息が切れた。
 緩やかな尾根道を進んでいくと、虚空蔵峰に到着した。高坪山への道とは逆方向にも道が続いており、荒島城コースという標識が立てられていた。至林道花立切田線と書かれていたが、どこに通じているのか見当がつかなかった。見るとしっかりした道なので、歩いて確かめることにした。
 歩き出すとすぐに広場に出て、右にも荒い刈り払い道が付けられていた。方向からいうと、鍬の集落から延びる林道の先に落ち込む尾根に続いているように思えた。そのうち、高坪山の東面からの登山道が切り開かれることになるのかもしれない。
 登山道は、北に方向を変え、一旦下ってから小ピークへの登り返しになった。周辺にはブナ林が広がり、深山の雰囲気が漂うようになった。小ピークの上で笹藪の中を見ると、四等三角点を見つけることができた。このピークは、523.7mの大山であることを確認することができた。登山道が、関川村と荒川町の境界線に沿って続いているとすると、最後は荒川まで行ってしまうことになり、それだと帰るのが大変になるなと、少し不安になった。帰りのことは、登山口まで行ってから考えることにして先に進んだ。
 大山三角点ピークからは、急な下りになった。左の谷間には、背の高いブナが並ぶようになった。坪田氏の「ブナの山旅」でも高坪山のブナ林に高い得点を与えているが、それは高坪山山頂付近のすらりと太さのそろった若い林に対してのものである。この大山三角点付近のブナ林は、それとは違う印象を与えるものであった。海岸線からも近い里山で、このようなブナ林に出会うことができるのは幸せなことではないだろうか。
 下りの途中で、登山道は左に方向を変え、痩せ尾根の下りが始まった。地図を見ると、大山三角点の北側から北西に延びる、途中に小ピークが三つ連なった尾根に進んでいるようであった。山をどんどんと下っていくことになった。この尾根には荒島城と呼ばれる山城があったのか、小ピークの基部は、横堀の跡のような、短いが急なギャップがあり、ロープを頼りに滑りやすい斜面を登るような所も現れた。最後のピークからは、右の枝尾根に方向を変え、右下に沢が近づいてくると、登山口と書かれた広場に下り立った。
 左手に桑畑の跡地を見ながら農道を下っていくと、舗装された車道に飛び出して、ここには、右花立(R.113)、左運動公園、登山口に向かっては荒島城コース(至虚空蔵峰)という、新しい標識が掲げられていた。地図で、いまいる位置も推測することができた。運動公園に戻れば、位置関係を確認できるのだが、高坪山の山頂に登っていないのが心残りであった。下山後に、車を動かしてこの登山口を確認しに来ることにして、登山のやり直しということにした。
 農道を引き返し、荒島城登山口からの登りを開始した。急な登りが続いた代わりに、高度も一気に上がった。小ピークを乗り越していくと、右前方に大山三角点の山頂が迫ってきた。みぞれ状の雨が降り出し、ブナ林を白い霧が覆うようになり、幻想的な雰囲気が漂ってきた。大山三角点まで戻り、ひと息ついた。ここまで戻れば、虚空蔵峰までは、緩い登り返しがあるだけである。
 虚空蔵峰まで戻って寄り道を終えて、高坪山の山頂への道に進んだ。緩やかな登りを続けていくと、マイクロウェーブの反射板の置かれた、飯豊連峰見晴台に到着した。当然ながら、飯豊連峰の眺めは閉ざされていた。晴れていたならば、真っ白に雪化粧した姿を眺めることができるはずなのだが。
 黒川村蔵王からのコースが合わさる三方境で、高坪山へは右に方向を変えることになる。この付近から高坪山山頂までは、美人林を呼ぶことができるであろう、ブナ林が一番美しいところである。ほぼ平坦な道を進んでいくと、高坪山の山頂に到着した。
 高坪山の山頂は広場になり、お地蔵様と鐘が置かれている。ハイキングシーズンには賑わう山頂であるが、誰もいなかった。腰を下ろして、寒いがビールでもと思ったところへ、雷鳴が轟いた。黒雲が広がり、あたりも暗くなりはじめていた。これはいけないとばかりに、下山を急ぐことにした。
 高坪山の山頂からは、蔵王コースを下った。登山者が多いためか、登山道が大きくえぐれたところもあり、ロープが張られているものの、足元に注意する必要があった。雷は数発雷鳴を轟かせたが、次第に遠ざかっていった。尾根の途中で、黒川村への登山道が分かれるが、その入口には、この先工事のためにおりられませんという看板が置かれていた。登山道は沢に向かって下るので、砂防工事でも行われているのであろうか。塩沢林道から蔵王権現へのコースなら歩けるのであろうか。来年にでも、工事の具合を確かめてみる必要がある。
 尾根の末端で右に丸太階段を下ると、沢に下り立った。沢の合流点を横切って、右岸沿いに杉林の中を進んでいくと、虚空蔵平の分岐に戻ることができた。
 車に戻り、最後に荒島城コースの登山口を確かめていくことにした。登山道入口の先の車道を進んでいくと、牧草地の中の道になった。舗装が途切れており、先をうかがうと、道がえぐれていて車での通過は、オフロード四駆でなければ難しそうであった。車を停めて、歩いて先に進むことにした。短い距離で、再び舗装道路に変わった。ごく短い区間だけ道路が整備されていないのは、なにか事情があるのだろうか。荒島城入口の標識までは、思ったよりも距離があった。途中で車を使っているために推測ではあるが、荒島城入口から登山者用駐車場までは、15〜20分ほどの歩きになろうか。
 荒島城コ−スを歩くには、蔵王コースを登って高坪山にまず登り、虚空蔵峰を経由して荒島城コ−スを下り、最後に車道歩きで戻るという周遊コースが良いと思われる。二通りのブナ林を楽しむことができ、距離も長くなって、充実した山歩きを楽しむことができるであろう。
 ところで、この荒島城コースについては、これまで出版されたガイドブックでは紹介されたことは無かったと思っていた。山行記録をまとめるために他のガイドブックを見ていると、「新潟の里山」における高坪山の地図には、この荒島城コースに破線が記されていた。しかし本文中には、虚空蔵コースと蔵王コースしか記載されていない。以前から、このコースがあったのか、この著者は地図が読めないのか、どちらなのだろうかと疑問が残る。

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