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以東岳


【日時】 2002年10月13日(日)〜14日(月) 1泊2日(テント泊)
【メンバー】 テクテク会 13名
【天候】 13日:晴 14日:曇り

【山域】 朝日連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
以東岳・いとうだけ・1771.4m・一等三角点本点・新潟県、山形県
【コース】 泡滝ダムより
【地形図 20万/5万/2.5万】 村上/大鳥池/大鳥池
【ガイド】 アルペンガイド「鳥海・飯豊・朝日」(山と渓谷社)、飯豊・朝日連峰を歩く(山と渓谷社)、山と高原地図「朝日・出羽三山」(昭文社)
【温泉】 かたくり温泉ぼんぼの湯 350円

【時間記録】
10月13日 4:20 新潟発=(R.7、鶴岡、鶴岡IC、山形自動車道、庄内あさひIC、大鳥 経由)=8:30 泡滝ダム〜9:00 発―10:10 冷水沢吊り橋〜10:18 発―10:50 七ツ滝沢吊り橋〜11:10 発―11:58 七ツ滝沢分岐―12:19 大鳥池  (テント泊)
10月14日 5:12 大鳥池発―6:35 三角峰鞍部〜6:40 発―7:04 オツボ峰―7:50 以東岳〜8:40 発―9:22 ウツボ峰―9:45 三角峰鞍部〜9:57 発―11:20 大鳥池〜12:40 発―13:07 七ツ滝沢分岐〜13:10 発―13:30 七ツ滝沢吊り橋〜13:46 発―14:06 冷水沢吊り橋―14:56 泡滝ダム=()=20:10 新潟着

 以東岳は、朝日連峰の北端に位置し、ピラミッド型の大朝日岳に対し、肩を怒らせた重量感のある姿をしている。以東岳は、一等三角点の山であり、展望の山としても名高く、麓には山形県最大の大鳥池を抱いている。この大鳥池は、山からの土砂によって堰止められたといわれ、怪魚タキタロウ伝説で有名である。
 インターネットの山仲間で作るテクテク会のお泊まり山行を以東岳で開くことになった。大鳥池での宴会と紅葉の以東岳が大きな目玉で、総勢13名のメンバーが集まった。以東岳は、新潟からでは遠く、個人では行きづらいために、参加者が増えたようである。テントの収容人数をオーバーしたため、テント泊と山小屋泊まりに分かれることになった。泊まりのためのシェラフやら大型ザックの購入で、かなりの出費になった人もいたようである。
 心配していた天気予報も晴となり、山の期待が高まった。集合場所の道の駅「豊栄」に到着すると、すでに皆は集合していた。他のメンバーは海沿いの道で行くというので、鼠ヶ関の先の道の駅「あつみ」で落ち合うことにして、まずはメンバーのピックアップのため新発田に向かった。鶴岡からは、高速を使って庄内朝日まで行き、大鳥への県道に進んだ。いつもは、誰かが迷子になるのが普通なのだが、今回は車の移動は順調にいった。
 泡滝ダムに到着してみると、何十台もの車で駐車スペースがほぼ満杯になっているのに驚かされた。なんとか場所を見つけて停めたが、北極クマの車は、かなり戻った所に停めるはめになった。皆の荷物をみると、お泊まり山行ということで、大荷物になっていた。もっとも、その中身は酒や食料がかなりの部分を占めていることが後で判った。初日は大鳥池までなので、なんとか歩けたが、もっとハードなコースの場合には、減量に心がけるように言う必要があるだろう。
 泡滝ダム付近の渓谷は、緑の色が濃く、紅葉はまだ始まっていなかった。歩き出すと、暖かい陽気に、汗が噴き出てきた。渓谷沿いの道といっても、僅かながらもアップダウンがあり、重荷に耐える必要があった。キノコ採りや大鳥池までの日帰りハイキングの登山者が追い越していった。時間は、余るくらいなので、のんびり歩くことにした。
 第一の目標地点の冷水沢吊り橋を順調に通過し、第二の目標地点の七ツ滝沢吊り橋で昼食休憩とした。見上げる山肌の紅葉も、始まりかけていた。新潟を朝出発すると、先回の化穴山山行の時もそうであったが、結局ここで昼食になってしまう。一同、吊り橋の上で記念写真を撮ったりして、楽しんでいた。
 ここからしばらくは七ツ滝沢沿いの登りが続くが、七ツ滝コースの分岐を過ぎると、つづら折りの急登が始まる。七ツ滝コースの入口にはロープが張られ、標識からも七ツ滝コースの字が消されていた。分岐の先の清水を飲んで、登りに備えた。このコースは、水場にはことかかないが、この水場は、苔の生えた岩場からしみ出しており、とりわけ美味しく感じる。
 つづら折りの道は、水平移動が大きく、ショートカットができている。皆も元気なようなので、ショートカットを繰り返した。左手にトラバースするようになると、大鳥池への乗越部も近づいてくる。乗越部からブナ林の中を緩やかに下っていくと、木立の間から大鳥池が姿を現した。
 大鳥池小屋の周りの広場は、休んでいる登山者で賑わっていた。見ると、仙台に転勤になってしばらく合わなかったムームーがラーメンを食べていた。昨日入山して、以東岳に登ってきたとのことであった。春の火打岳が始めてのテント泊山行で、今回が始めての単独でのテント泊だというが、なかなかの進歩である。
 青空のもと、湖面は藍色に染まり、以東岳の山頂の避難小屋もはっきりと見分けることができた。まずは、山小屋組は寝場所の確保、テント組はテントの設営ということになった。テン場には、8張りほどのテントが張られていた。沢沿いの、他からは少し離れた場所にテントを張った。
 さっそくビールにありつきたかったが、時間もまだ早いため、三角池(みすまいけ)の見物に出かけることにした。三角池への道は、大鳥小屋の前から始まるが、標識がないために少し判りにくい。湖岸沿いの道をしばらく続けると、ブナ林の中の緩やかな登りになる。先回の残雪時には、池やブナ林の眺めを楽しめたのだが、今回は、登山道周辺の木立が密で展望が利かないのが少し残念であった。尾根を乗り越して僅かに下ると、三角池の畔に出た。三角池は、小振りな池であるが、色づいた木立を水面に映し込んだ風景は美しかった。他の山であったら、湖岸には木道が敷かれて、休憩のためのベンチが設けられているところであろうが、手つかずのままで、湖岸の泥に足を取られながらの見物になった。せっかく持ってきたビールも腰を下ろす所がないために、おあずけになった。
 テン場に戻り、第一日目における一番の目的の宴会の開始になった。暖かい日で、テント場の草地にビニールシートを広げて座り込んだ。皆、充分過ぎるくらいの酒と食料を持ち込んでいた。宴もたけなわといったところで、桃パパが現れた。昨日から以東岳にやってきているとのことであった。酔いが回って早々と寝込むものもいたが、5時過ぎの夕暮れまで酒盛りは続いた。小屋組が引き上げた後、テントの中での二次会を続けた。それでも、飲み疲れ、話し疲れもあって、7時過ぎには早々と寝込むことになった。
 暖かい夜であった。4時の起床時には、雲が広がって星が消えていた。まだ暗い5時過ぎに、ヘッドランプを頼りに歩き出した。水門を渡って少し先が、オツボコースと直登コースとの分岐になる。いきなりの急登が始まり、皆、声も出ずに黙々と登り続けることになった。次第に明るくなってきて、ヘッドランプを消す頃までには、かなりの高度を稼ぐことができた。急登の割には遅れるものもおらず、順調なペースであった。
 明るくなるにつれ、厚い雲は消えそうもないことが判った。雨もぱらついたが、すぐに止んでくれた。昨日のような青空は期待できそうもなかった。小ピークの上に登り着いたところで地図をみると、ここは1430mピークで、この先が三角峰下の鞍部のようであった。僅かに登り返してから下ると、鞍部の広尾根に出た。ここには水場の標識が立てられていた。東斜面に少し下るようであったが、水場の確認はしなかった。
 この先は長い稜線歩きが続いた。冷たい風が当たり、気分もいささか暗くなった。オツボ峰を通過する頃から、以東小屋泊まりや狐穴小屋泊まりの登山者にもすれ違うようになった。大型の三脚を持った者もおり、山頂での写真撮影を諦めて下山してきたもののようであった。登山道は緩やかに右に巻くように続いていった。展望が閉ざされているため、以東岳の山頂がどこかは判らず、何度か期待は裏切られた。
 ようやく到着した以東岳は、まず一等三角点が出迎えてくれた。山頂標識は、その先の広場にあった。この下にクマの毛皮を広げたような大鳥池、彼方に続く稜線の先に大朝日岳という説明も、ガスの中にむなしく聞こえた。一通り記念写真を撮った後、風に追われるように、以東小屋に逃げ込んだ。
 ガスのために見えなかったが、山頂から少し下った所に小屋はあった。避難小屋の二階に上がってひと休みした。山頂での乾杯用に持ってきたビールも寒くて飲む気にはなれなかった。小屋の中でも、じっとしていると寒いので、再び歩き出すことにした。
 以東岳からは、直登コースを下山に使えば、すぐに風当たりの弱い所に逃げ込めることは判っていたが、天気の回復に一縷の望みをつないで、稜線通しの来た道を戻ることにした。朝日連峰は、ほとんど登ったことの無い者が大部分であった。紅葉の盛りの山の眺めを楽しんでもらいたかった。三角峰下の鞍部手前でガスが切れた。一同、さっそくカメラを構えた。三角峰を眺めるのに良い場所にいたので、休憩として、天気の回復をしばらく待つことにした。天気の変化は早く、みるみるガスが上がって、紅葉の山肌が現れた。
 ここからは、展望を楽しみ、写真を撮りながらの、のんびりモードの歩きになった。1430mピークに上がると、待望の大鳥池の眺めも目に入ってきた。横に広がってクマの毛皮には見えなくなっていたが、目的の一部はかなえられた。池の向こうには化穴山が高く聳えていた。この三連休で化穴山の再挑戦を行うべきであったかもしれないが、また別な機会を待とう。
 1430mピークからは、紅葉のトンネルをくぐるような道になった。登りの時は暗くて気づかなかったが、紅葉はこの付近が盛りであった。こんな登山道を登ってきたのと思うような、急坂が続いた。
 大鳥池に戻った所で、テントを撤収し、小屋の前のテーブルで昼食とした。アルコールも入って、宴会の続きになった。小屋の周辺は、日帰りハイカーで賑わっていた。
 すっかり軽くなったザックを背負い、下山に移った。つづら折りの道は、ショートカットを繰り返して下った。泡滝ダムへの道は、最後はうんざり気味になったものの、一同無事に歩き通すことができた。朝日連峰は始めて、小屋泊まりも始めてという者が多い中、無事に山行を終えることができてほっとした。
 帰りは、ぼんぼの湯に入り、そこでとりあえず解散とした。


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