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小蓮華山、白馬岳


【日時】 2002年9月21日(土)〜22日(日) 1泊2日 テント泊
【メンバー】 岡本、社長、キム
【天候】 14日:晴 15日:曇り

【山域】 白馬岳周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
乗鞍岳・のりくらだけ・2469m・なし(2436.7m・二等三角点)・長野県
小蓮華山・これんげさん・2768.9m・なし・新潟、長野県
白馬岳・しろうまだけ・2932.2m・一等三角点本点・長野、富山県
【コース】 栂池高原より
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳/白馬岳
【ガイド】 白馬岳を歩く(山と渓谷社)、アルペンガイド「立山・剣・白馬岳」(山と渓谷社)、山と高原地図「白馬岳」(昭文社)
【温泉】 道の駅「小谷」深山の湯 500円

【時間記録】
9月21日(土) 4:00 新潟発=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、白馬大池駅 経由)=6:30 栂池高原=(ゴンドラリフト、栂池ロープウェイ)=7:47 栂池自然園駅―8:13 鵯峰分岐―8:39 銀清水―9:03 天狗原〜9:10 発―10:16 乗鞍岳〜10:28 発―10:58 白馬大池〜11:22 発―12:10 船越ノ頭〜12:16 発―13:16 小蓮華山〜13:23 発―13:59 三方境〜14:05 発―14:50 白馬岳〜15:01 発―15:25 白馬岳キャンプ場  (テント泊)
9月22日(日) 5:37 白馬岳キャンプ場発―6:02 白馬岳〜6:26 発―6:56 三方境―7:36 小蓮華山〜7:55 発―8:30 船越ノ頭〜8:47 発―9:16 白馬大池〜9:30 発―9:57 乗鞍岳〜10:08 発―10:46 天狗原〜11:00 発―11:24 鵯峰分岐―11:38 栂池自然園駅=(往路を戻る)=16:00 新潟着

 白馬岳は、夏にも残る大雪渓と高山植物の豊富さによって、北アルプスでも槍・穂高岳と並んで人気のある山になっている。白馬岳への登山コースとしては、縦走路を別として、猿倉からの大雪渓や蓮華温泉からのルートが一般的であるが、最近では栂池高原からロープウェイを利用し、天狗原、白馬大池経由で登るルートが良く用いられるようになっている。
 9月始めに計画していた立山山行は、雨の予報のために中止になった。新潟近くの山への山行も、朝方の雨によって、湯ノ平温泉ヘのハイキングになった。露天風呂に入りながらの話で、北アルプス山行のリクエストが出たことから、一週おいて白馬岳に出かけることに相談がまとまった。社長は、シェラフ等は持っているものの、テント泊はしたことがないというため、三連休の山小屋の混雑を避けるためもあって、テント泊で出かけることにした。秋になって、大雪渓の通過は難しそうであったため、まだ歩いていない栂池高原から往復することにした。
 朝4時の集合になった。運転は社長がしたのたが、助手席で起きているのも、少々眠かった。糸魚川のコンビニで買い物をして、国道から栂池高原への道に曲がった時には、太陽もすっかり昇っていた。栂池高原に出て、スキー場が近づくと、前方に白馬連峰の眺めが広がった。車を停めて、山の眺めに見入った。左から白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳、小蓮華山と連なる山並みが、青空をバックに、屏風のように横に広がっていた。今日は、あの頂きにと、期待と緊張感が高まった。
 栂池自然園まで車で入るつもりでいたのだが、林道が閉鎖になっており、ロープウェイ利用ということになった。栂池高原までの車の規制は夏の間だけと思っていたが、状況が変わっていたようである。車で上がってもらっては、ロープウェイの利用者が減るので、自然保護は別問題として、営業的にも規制が入ったのであろう。
 乗り場脇の一日300円の駐車場に入り、出発の準備をした。栂池自然園までは、ゴンドラリフトと栂池ロープウェイを乗り継いでいくことになる。往復券3000円に加えて、10kg以上の荷物料として300円×2が掛かった。すでにゴンドラリフトは動いており、6時30分が始発のようであった。続く栂池ロープウェイは、20分おきで、始発から二本目の7時40分発に乗り込むことができた。ロープウェイの始発の時間とそう変わりない出発時間になった。
 ロープウェイの山頂駅は、標高1830mで、栂の大木に囲まれて、すでに高山の雰囲気がただよっていた。猿倉1230m、蓮華温泉1460mといった標高に比べても、栂池コースの登山口は高い所に位置している。
 車道を歩いていくと、前方に栂池山荘が近づいてきた所で、右に登山道らしき道が分かれたが、ここには標識が立てられていなかった。その先の栂池山荘前の広場に出ると、始発のロープウェイで上がった登山者が、朝食取りながら休んでいた。標識に従って登山道に進むと、すぐに右手から先ほど見た登山道が合わさり、ここの分岐にはロープウェイへという標識が立てられていた。栂池山荘に客を呼び込もうとする魂胆が見えていた。
 樹林帯の中の、急な登りが始まった。トラバース気味に右手に進むと、尾根の登りになった。4〜5人用テントをいれたザックは重く感じられ、辛い歩き出しになった。一緒に歩き出した登山者のほとんどは、小屋泊まり装備の継走であるため、それに引きずられて、歩くペースが早めになってしまうのも、辛く感じられる原因のようであった。あるいは、先週の飯豊ダイグラ尾根の登りの疲れが残っているのだろうか。ゆっくりペースを保つように心がけて登り続けた。
 30分を過ぎて一回目の休みを取り、少し歩くと水場のある広場に到着した。どうせなら、ここで休めば良かったが、始めてのコースとなると、時間ごとに休んでいくしかない。急斜面を登り切って傾斜が緩むと、左手に白馬鑓ヶ岳と杓子岳の山頂が並んで姿を現した。山岳展望の期待を膨らませてながら歩いていくと、天狗原の休憩所に到着した。木道が敷かれ、ベンチも設けられていた。前方には、これから越えていく乗鞍岳が、横に広い山頂を見せていた。池の縁の草は、黄金色に染まり、ナナカマドの深紅の葉と針葉樹の緑が互いを引き立たせていた。紅葉の始まりであった。
 天狗原から木道歩き僅かで、風吹大池からの道が合わさった。昨年の8月4日〜5日に蓮華温泉から風吹大池経由の周遊コースを歩いているので、ここからは知った道ということになる。分岐のすぐ先で木道は終わり、岩を伝い歩くような急登が始まった。
 栂池コースは、ロープウェイを利用したお気軽コースと思ってしまうと、この乗鞍岳への登りと、白馬大池への下りでは、思ってもいなかった悪路に苦戦することになるかもしれない。下山時には、ルルブといった観光ガイドを片手にしたカップルや、運動靴で赤ん坊をキャリーバックに入れた夫婦が、登っていくのに出会った。天狗原から先は、夏には雪渓の横断もあり、しっかりした登山装備と心構えが必要だと思うが、乗鞍岳に登って白馬大池を眺めるというのが、ロープウェイ利用の日帰りハイキングのモデルプランになっているようであった。
 一気に登りきることはできず、急登の途中で一回、融け残りの雪渓の縁でもう一回休むことになった。キムと社長も、日頃の日帰り山行と違った、シェラフなどをいれた泊まりの装備の重さに、体力を消耗しているようであった。眼下には、天狗原に点在する池塘が、青空を映し込んで輝いていた。
 雪渓の横断点からは、急登僅かで、乗鞍岳の山頂の一画に登り付いた。ハイマツ帯の中にロープで仕切られた登山道を緩やかに登っていくと、大きなケルンの立てられた乗鞍岳山頂に到着した。腹も空いてきており、軽い食事タイムにした。ガスが流れて、座っていると肌寒く感じられた。雪倉岳が見え隠れしていた。
 大岩を伝い歩きながら、白馬大池へと下っていく道は、足元に注意を払う必要もあり、距離や標高差の割に疲れが増した。夏の盛りには、このコースを旅行会社の集めた団体が歩いているが、中には足を取られて怪我をする者もいるのではないだろうか。
 白馬大池山荘に到着して、ほっとひと息ついた。ここまでの歩きは、ほぼコースタイム通りであった。ここまででかなり遅れるようなことがあったら、白馬大池泊まりで、翌日空身で白馬岳往復とも思っていたが、この様子なら、予定通りに白馬岳まで登れそうであった。白馬大池周辺の草原は、枯れ草色に染まっていた。
 ひと休みの後、後半の稜線歩きのために出発した。登山道脇の草地には、ウラシマツツジの真っ赤に染まった葉の絨毯が広がっていた。白馬大池で休みを取ったばかりというのに、ともすれば止まりそうになる足を努力しながら前に出し続ける登りが続いた。昼になってガスが広がり、第一の目標の小蓮華山は姿をかくしていた。船越ノ頭を越して急登を続けているうちに、眠気が襲ってきた。いつもだと、前夜に出発して車の中で寝て、ロープウェイの始発に合わせてゆっくり起きるというのがパターンなので、前の晩にはあまり良く眠れずに3時に起きだしたのが利いているようであった。それでも、腰を下ろして少し目をつぶっていると、歩く気力が戻ってきた。
 小蓮華山を越えると、ガスの切れ間から左側が切れ落ちた白馬岳の山頂が姿を現した。砂礫地の幅広尾根を緩やかに下っていくと、三方境への僅かな登り返しになった。振り返ると、二人は、かなり苦しそうであったが、まだしっかりと付いてきていた。三方境からは、鉢ヶ岳が姿を現し、長池が青い湖面を見せていた。いよいよ最後の登りになった。稜線は、黄色や赤に染まった草で、筋状の模様が付けられていた。途中数ヶ所の岩場を乗り越すと、白馬岳の山頂に到着した。
 白馬岳には、これが五回目の登頂になった。日本百名山のうちでは、飯豊本山と並んでの第一位ということになる。これまでは、すべて8月初旬に登っていたので、秋に登ったのはこれが始めてということになる。ガスが流れて周囲の展望は閉ざされていたが、これは明日の朝を期待して、とりあえず記念写真を撮った。白馬山荘方面からも続々と登山者が登ってきていた。夏の盛りほどではないにしても、秋の三連休ということで、山は賑わっているようであった。
 頭を生ビールに切り換え、村営小屋脇のテント場に下ることにした。テント場に到着すると、思っていた以上のテントが並んでいた。幸い、良いスペースを見つけることができたが、もう少し遅いと、場所を見つけるのに苦労したかもしれない。翌朝数を確かめてみると、35張りはあった。ほとんどは、大雪渓ルートから登ってきているようであった。
 さっそく、村営小屋の食堂で生ビールにありつくことにした。今回の食料計画は、まずこの生ビールのことがあった。ビールを飲むということになると、腹に入れるものも欲しくなる。それならば夕食を兼ねて食べてしまい、夜の食事は酒のつまみ程度ということにした。食堂のメニューは、以前の記憶よりも少なく、ご飯ものとしてはカレー類しかなかった。夏のシーズンが終わったせいのようであった。生ビール800円+カツカレー1200円の食事になった。今日の歩きの健闘を祝して乾杯をした。
 テントに戻り、コンビニの鍋焼きうどんを煮込み、鮭のみそ漬けを焼いて、缶ビールで一杯やったまでは良かったのだが、キムの足がツリだし、横になるためシェラフに入ってしまった。前の晩のマージャンでほとんど寝ていないとのことで、5時前には眠り込んでしまった。寝不足で山にくるとは、山をなめているというしかない。これが良い反省点になってくれると良いのだが。社長は、毎週のように新潟周辺の山に行っているのと、所属の山の会の山行の経験がものをいって、無難に白馬岳まで登ることができた。キムは、山の経験が浅く、山を簡単に考えているところがあるが、一級のスキーの腕前で、基礎的な脚力があるのため、付いて来れたようである。しばらく社長と話していたが、7時頃には寝ることになった。テントの外に出てみると、満月がガスにおぼろにながらも明るく輝いていた。今晩は、十五夜のはずで、山の上でのお月見になった。
 周囲のざわめきのため、4時に目を覚ました。朝食を軽くとった後、テントの撤収を行った。村営小屋下の水場で水を汲んだ後に出発した。白馬岳への登り返しの途中、空は明るさを増していった。白馬岳山頂からは、曇り空ながら、周囲の展望が広がっていた。五龍岳、鹿島槍ヶ岳の向こうには、槍・穂高岳を眺めることができ、剱岳と立山は大きく山頂を見せていた。今年の課題であったはずの毛勝三山が目の前に横たわっていた。
 山頂からの眺めを楽しんだ後は、紅葉に彩られた稜線歩きになった。昨日は、登りの辛さに眺めを楽しむ余裕はなかったが、下りの足は楽で、写真を撮りながら、次第に遠ざかっていく白馬岳を振り返りながらの、のんびりした歩きになった。
 乗鞍岳に登り返したところで、乗鞍岳の三角点を探すことにした。先回はガスのために、ロープで囲まれた登山道を辿るのがやっとであり、三角点を確認していなかったことが心残りであった。山頂の縁近く、東西に延びる登山道が、南東に折れ曲がるカーブ地点のすぐ北側10m程の地点に三角点を見つけることができた。個人的な金属板の山頂プレートも脇に置かれていた。天狗原方面から登ってくると、登山道の傾斜が緩んで、ようやく山中の一画に到着したが、まだ緩やか登りが残っているという地点である。乗鞍岳の最高点は、ケルンよりも南の地点のようであり、どこを山頂とするかは、考えの分かれるところである。
 乗鞍岳からは下りの足を速め、天狗原でひと休みしたのち、ロープウェイ駅まで一気に下った。
 話の成り行きで計画された白馬岳山行であったが、紅葉の始まりの山を楽しむことができた。雪の訪れも近く、これが今年最後の北アルプス山行になりそうである。


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