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雄国山、猫魔ヶ岳、厩岳山、雄国沼


【日時】 2002年8月25日(日) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 曇り後晴

【山域】 磐梯山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
雄国山・おぐにやま・1271.2m・三等三角点・福島県
猫魔ヶ岳・ねこまがたけ・1404.0m・一等三角点補点
厩岳山・まやたけさん・1261m・なし・福島県
雄国沼・おぐにぬま・1090m・なし・福島県
【コース】 パノラマコースより雄国沼一周
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/磐梯山
【ガイド】 うつくしま百名山(福島テレビ)、山と高原地図「磐梯・吾妻」(昭文社)
【温泉】 ラビスパ裏磐梯 840円

【時間記録】 5:50 新潟発=(磐越自動車道、会津坂下IC、R.49、会津坂下、喜多方、R.459 経由)=7:40 ラビスパ裏磐梯〜8:00 発―8:18 西口分岐―8:42 中間点ベンチ―9:30 雄国山―9:48 檜原湖分岐―9:55 雄国沼休憩所―10:50 猫石―11:08 猫魔ヶ岳〜11:12 発―11:24 猫石―11:41 分岐―11:56 厩岳山〜12:15 発―12:25 分岐―12:56 林道ゲート―13:12 展望台―13:26 林道ゲート―13:46 雄国沼駐車場―14:22 雄国沼休憩所〜14:26 発―14:29 檜原湖分岐―14:53 雄国山―15:24 中間点ベンチ―15:42 西口分岐―15:56 ラビスパ裏磐梯=(往路を戻る)=18:50 新潟着
 猫魔ヶ岳は、磐梯山の西に八方台を挟んで向かい合い、雄国山、厩岳山、古城ヶ峰などとともに古い火山の外輪山を形成している。その中心のカルデラ湖である雄国沼は、福島県では尾瀬の大江湿原と並んでニッコウキスゲの大群落地として有名で、シーズンともなれば、観光客やハイカーで大賑わいとなる。猫魔ヶ岳は、南北からスキー場に浸食されているが、雄国沼にかけての一帯は、自然が良く残されている。
 週の半ばに風邪を引いた。飼い始めた野良の子猫が先週風邪を引いて、このまま死ぬかと思うほどになったが、獣医に三度ほどかかって、万札が飛んでいったおかげで、すっかり元気になった。猫風邪がうつったわけではなかろうに、喉の痛み、悪寒、発汗がひどくなり、週末の山行が危うくなった。翌週に北アルプスのテント泊山行を予定しており、重荷を背負うためには、体力を整えておく必要があった。土曜日は、とりあえず静養。日曜日にどこの山に行くか迷った。お気軽ハイクの山の候補を考えていった。
 「うつくしま百名山」では、猫魔ヶ岳と合わせて厩岳山、別項目で雄国山を取り上げている。「会津百名山」と違って、「うつくしま百名山」は、比較的簡単に登れる山が選んであるので、この機会に登頂リストを増やしておくことにした。最近できたという裏磐梯ラビスパから雄国山への登山道を歩き、外輪山を一周する形で猫魔ヶ岳と厩岳山の山頂を踏むというルートを考えた。古城ヶ峰の山頂への道が無さそうであったが、現地で道が有るか無いかを探すのも面白そうであった。猫魔ヶ岳は、登山開始後三回目に歩いた初心者向きの山というイメージがあるが、このコースなら充分に楽しめそうであった。
 喜多方から裏磐梯へ通じるR.459に進んだ。八方台を通過するゴールドラインの有料道路の代金の節約のために、良く利用する道である。檜原湖まであと僅かというところに、プール、温泉、釣り堀、キャンプ場などが整備されたラビスパ裏磐梯がある。早朝であったため、温泉施設方面の車道の入口に鎖が掛けられており、車は自然にキャンプ場下の駐車場に導かれた。あたりを偵察すると、キャンプ場の入口に、雄国パノラマ歩道入口という標識が掲げられていた。
 駐車場には、キャビンに泊まったと思われる中高年グループの団体が迎えのバスを待っていたが、登山者は、夫婦連れが一組いるだけであった。キャンパー達は、朝食に忙しいようであった。登山者は、それ程多くはないようであったが、登山道は良く整備されていた。
 歩き始めの急坂を登り終えると、雑木林の中の緩やかな登りになった。坂が少し急だと、いつになく心臓が苦しくなり、やはり本調子ではないようであった。右手からラビスパ西口からの登山道が合わさった。歩いてきたのは、ラビスパ東口からの道ということのようであった。
 雲が低く垂れ込めており、周囲の展望は望めそうもなかったが、雑木林の中に続く道で、パノラマコースという名前には少々疑問を感じた。その代わりに、森林浴という感じで、良く整備された道を気持ち良く歩くことができた。1102mピークを越して、なだらかな稜線歩きを続けていくと、伐採地なのか木立が切れて展望が広がった。雲のために遠望は利かなかったが、ここからは、飯豊の眺めを楽しむことができそうであった。休憩には良さそうな所で、ベンチが置かれて、「ラビスパ東口2.4km、雄国山頂2.3km」と書かれていた。ここが中間点のようであった。片道4.7kmという距離を考えると、このコースでは、雄国山までが一般的なコースであろうか。
 鞍部を越すと、雄国山に向かっての急な登りが始まった。雄国山の山頂は奧に向かって広がっており、登り着いたと思った所からは、山頂までもう少し歩く必要があった。雄国山の山頂には、展望台が設けられていた。眼下に雄国沼が広がっているはずであったが、ガスに隠されていた。
 雄国山の山頂からは、木の段々が設けられた急な下りになった。登山道脇には草原が広がり、キオンやヨツバヒヨドリの花が咲いていたが、雑草よろしく繁茂しすぎて、花を観賞するという風情は乏しかった。下っていく途中からは、雄国沼の湖面や休憩所の建物が目に入ってきた。檜原湖湖畔の雄子沢からのコースを合わせ、少し下ると、パイプで引かれた水場に出た。水場の沢から上がると、休憩所の建物の裏手に出た。休憩所は、以前と違って、立派な建物に変わっていた。
 時計を見ると10時になっており、雄国沼付近はハイカーで賑わっているかと思ったが、数名のハイカーに出会ったのみであった。ニッコウキスゲも終わり、シーズンオフといったところであろうか。沼を時計回りに進み、まずは猫魔ヶ岳に向かった。湖畔から湖面の風景を楽しみながら歩いていくと、一段上がった樹林帯の歩きになった。トラバース気味に進んでいく道で、なかなか登りに転じようとしなかった。何本かの沢を横断するとようやく急な登りが始まった。下山してくるハイカーにも出会うようになった。
 急登を終えると、猫岩に到着した。猫岩は頂上に岩を積み重ねた小岩峰で、眼下に雄国沼を一望できる、展望台になっている。先回歩いた時の記憶は薄れていたが、この雄国沼の眺めは、しっかりと覚えていた。ガスもあがって、雄国沼全体を眺めることができるようになっていた。
 猫魔ヶ岳一帯には、化け猫の伝説が残されている。「猫魔ヶ岳には、人をさらって食べてしまう化け猫が住み着いており、麓の人々から恐れられていた。ある日、どうしたことか、若い腕自慢の猟師の女房をさらってしまった。猟師は、女房を助けに山に分け入った。化け猫の隠れ家に辿り着いてみると、化け猫は女房に化けて、どちらがどちらか判らない。鉄砲の先をどちらに向けてよいやら迷っていると、本当の女房がいつものような目配せをして、自分であることを知らせた。そこで銃砲一発。化け猫はめでたく退治されたとさ。」檜原湖湖畔にある火山博物館の民話の出し物は、この様な内容であった。伝説はともかく、猫岩から眼下を見下ろしていると、山の主になった感じにはなる。
 猫岩のすぐ先が、厩岳山への分岐になっていた。一旦下ってから、猫魔ヶ岳への急な登り返しになった。結構息の切れる登りであった。
 登り着いた猫魔ヶ岳の山頂は、一団の中高年グループがやかましく騒いでいた。一等三角点にザックを寄りかからせていたので、写真撮影のためにどかすようにお願いした。デジカメで撮影をしていると、こちらは撮影しないのかと、いやみたらしく、国土地理院の白く塗られた標柱を指で示してきた。この三角点は、一等三角点だよと教えようかと思ったが、三角点などは興味もないであろうから無視することにした。
 磐梯山を眺めに少し先に進んでみた。少し先に岩が露出した小広場があり、ここが最高点のようであった。猫魔ヶ岳山頂の木製標識も、岩の間に置かれていた。先回登った時は、ここまでは来なかったはずである。不完全なピークハントであったかと、反省になった。磐梯山の山頂は雲に隠されていた。稜線は八方台に向かって下っており、登ってくるハイカーも目に入ってきた。猫魔ヶ岳へは、八方台からの入山者が多いようで、ラビスパ裏磐梯から歩いて来る者はまずいないようであった。周囲の展望は開けているのだが、南北から迫るスキー場が目障りであった。
 登山を始めた頃は、夏は登山で、冬はスキーと思っていた。しかし、磐梯山から猫魔ヶ岳にかけての山腹に刻まれたスキーゲレンデを見て、これはゆゆしき自然破壊ではないかと思うようになった。登山を愛するものはゲレンデスキーはするべきではないと思い、スキーは止めることにした。会津磐梯山は、会津の人々の故郷のシンボルではないのだろうか。余所者の私が見て、これはひどいと思うのに、何も感じないのだろうか。山でのトイレ問題を訴えている著名な女性の登山家は、たしか磐梯山の麓にペンションを経営しているのではなかっただろうか。磐梯山一帯の自然保護の運動が見られないことは不思議でならない。
 賑やかな猫魔ヶ岳を後にして、猫岩に戻った。猫岩への登り返しは、そう苦にはならなかった。歩いているうちにいつもの体調が戻ってきたようである。猫岩から厩岳山へは、しばらく急な下りが続いた。足元を刈り払いの草が覆っていたので、滑らないように注意が必要であった。ほぼ水平になった道を進んでいくと、左に山道が分かれた。この分岐には登山標識はなかったが、しっかりした道で、厩岳山へはこの道で間違いないはずであった。
 緩やかな登りを続けていくと、15分程の登りで、厩岳山の山頂に到着した。岩の転がる山頂広場は藪に囲まれていたが、雄国沼も眺めることができた。古城ヶ峰が、目の前に大きく広がっていた。腰を下ろして、昼食をとった。山頂標識はあるものの、誰も登ってはきそうもない静かな山頂であった。
 厩岳山からの下りの際には、古城ヶ峰への道はないかと探しながら歩いたが、見つからなかった。分岐に戻り、西に向かう道に進んだ。少し先で林道に出た。といっても、林道には夏草が茂り、車は走れない状態であった。登山道は草の刈り払いが行われているが、林道の草を刈る者はいないのは少しおかしな話である。
 30分歩いて、ようやく林道の分岐に到着した。ここには、鎖が掛けられており、車の進入禁止になっていた。登山地図を見ると、ここから古城ヶ峰の西の稜線に向かって登山道の赤線が記載されている。「保健保安林 遊歩道入口」という標識が立てられていた。もしかすると古城ヶ峰の山頂まで道が続いているかもしれないと思って、この道を確かめていくことにした。ブナ林の中に、丸太の段々が設けられた良く整備された道が続いていた。稜線の上に出たところで、展望台の広場が現れた。古城ヶ峰へと続く稜線を探ってみたが、藪で閉ざされていた。古城ヶ峰の山頂までの道は無いようであった。季節を選べば、ヤブコギでも登れない距離ではなさそうであった。今日のところは、ここまでということで、分岐に引き返した。
 この先は、雄国沼を眺めながらの車道歩きになった。足も疲れてきており、雄国沼入口までは、遠く感じられた。青空も広がるようになって、入口の展望台からは、雄国沼の眺めを楽しむことができた。雄国沼に向かって下りていく歩道は、木材チップが敷かれて、以前よりも歩きやすくなっていた。木道の敷かれた湿原には、数組のハイカーがいるだけで、静かな風景が広がっていた。先ほど登っていた猫魔ヶ岳は、湖面の向こうに遠ざかっていた。
 帰りの時間も気になりはじめて、早々に湿原を去ることになった。少し登り返してから、湖畔沿いの道を進んでいくと、休憩所に到着した。これで雄国沼を一周したことになる。
 雄国山に登り返し、雄国沼の眺めを振り返った。外輪山とカルデラ湖という地形を良く見て取ることができた。磐梯山を眺めると、北側の火口壁ものぞかせて荒々しい姿を見せていた。
 雄国山からの下りは、しばらくは高曽根山を正面に眺めながらの歩きが続いた。これくらいの眺めが広がれば、パノラマコースといっても良いかもしれない。やがて樹林帯の中に入り、ひたすら下りの足を速めることになった。幸い、良く整備された道で、歩きやすかった。それでも、全行程8時間の歩きになって、風邪引き後の足慣らしにしては、長い歩きになってしまった。
 下山後に、ラビスパ裏磐梯の温泉に入った。料金が高い割に、貸しタオルやロッカーは無し、露天風呂が塩素臭いのは頂けなかった。今回は、登山口の温泉ということで入ったが、次からは入ることはないであろう。

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