0217

黒森山


【日時】 2002年2月23日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 会越国境
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 黒森山・くろもりやま・560.2m・三等三角点・新潟県、福島県
【コース】 熊沢より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/野沢/徳沢
【ガイド】 なし
【温泉】 御神楽温泉 みかぐら荘 250円(通常500円)

【時間記録】 6:50 新潟発=(R.49、川谷 経由)=8:45 熊沢〜9:03 発―9:35 黒森山トンネル入口―10:28 黒森山〜11:02 発―11:25 黒森山トンネル入口―11:46 熊沢=(川谷、R.49、御神楽温泉、R.49 経由)=15:30 新潟着

 新潟と福島との県境のうち、只見川から南の県境線は、古惣座山、土倉山、黒森山、目指山、大倉山、木地夜鷹山、高陽山といったピークを連ねて南下した後、西に向きを変えて、御神楽岳から浅草岳へと続いている。土倉山は、一等三角点の山として、最近では遠くからの登山者も訪れるようになっているが、その南の黒森山は、登ったという話を聞かない忘れられたような山である。磐越自動車道のトンネルが貫いており、この山の名前をとって黒森山トンネルと名前が付けられている。
 山に登るようになってから、自動車道路のトンネルを通過する時、そのトンネルに山の名前が付けられていることが多いことから興味を持つようになった。磐越自動車道も、新潟平野から山間部に入ると、トンネルが続くようになる。津川を過ぎて、小出川沿いの谷間を走った後に、県境をトンネルで通過するが、これが黒森山トンネルと名付けられている。
 黒森山という山に興味を持ったが、新潟周辺の藪山に多く登っている峡彩ランタン会の会誌のLATERNEにも記録は載っていない。黒森山トンネルを出るとすぐに龍ヶ嶽トンネルに入るが、車窓からは、高速道の保守のための建物があるのを一瞬かいまみることができる。トンネルの工事と保守のために、トンネル入口まで、自動車道路が延びているはずであった。地図を見ると、近くに熊沢の集落があり、車道がトンネル近くまで延びている。新潟県側から黒森山に登るのは難しいが、福島県側からならば、そう難しくはなさそうに思えた。
 2月にもかかわらず春めいた陽気が続くようになり、金曜日の夜は雨となった。雪も締まってきたようで、ラッセルの苦労ともお別れのような感じがする。晴の天気予報に誘われるままに、黒森山をめざした。暖かい朝になっていた。五頭山塊や菅名山塊を眺めると、麓の雪はほとんど無くなって、中腹の木立が黒々として、稜線部のみが白いままであった。今年の春山は、雪消えの早さに苦労しそうである。津川の町を通り過ぎ、県境を越してから、白板の集落で国道から分かれる道に入った。白板の集落は道が狭いところがあり、川谷から入る道の方が道幅が広いことが判った。鬼光頭(きこうづ)川沿いの道路は、二車線幅のしっかりした道であった。おそらく、高速道路の建設時には、この道を工事関係の車が行き来したものと思われる。山奥の集落に向かう道にもかかわらずしっかりと除雪された良い道が続いていた。あわよくばトンネル入口まで車で入れるかと思ったが、熊沢の集落を過ぎて小さな沢を渡った先の、消防団の建物の先で除雪は終わっていた。ここから歩き出すことは覚悟していたので、問題は無かった。
 この日が新しいスノーシューの二回目の使用であった。地図を見る限り、スノーシュー向きのコースに思えた。道路脇からは、道路上に雪が崩れてきていた。青空のもとだと、雪道の歩きもそう苦労にはならない。たちまち汗が噴き出てきて、山シャツだけになる必要があった。柞(たな)畑と地名が書かれている山間の畑地にでると、黒森山の山頂をうかがうことができた。山頂付近には林が広がっているようであった。
 車の走行音が聞こえてくると、黒森山トンネル入口に到着した。新潟方面の走行車線に建物があり、道路はその建物に続いていた。地上区間は狭いため、車はトンネルを出ると、すぐに次のトンネルに飛び込んでいった。ここまでは、30分ほどの車道歩きだったので、そう遠くは無かった。
 トンネル上部から尾根に取り付く予定であった。取り付きは杉林が広がり、登るのも問題は無さそうであった。ただ、高速道の建物へ通じる道とは別に、水平方向に車道が続いていた。地図では破線で示されている道が林道に変わっているようであった。様子見を兼ねて、先に進んでみることにした。小さな沢を回り込むと、その先に明瞭な尾根が落ち込んできていた。末端を行きすぎてから、尾根に取り付いた。杉林の中をひと登りすると、尾根の上に乗ることができた。順調に高度を上げていくと、左右が雪原となって落ち込んで、そのリッジ部を登るようになった。右手の斜面は、雪崩がおきて、灌木の枝がすだれ状に姿を見せていた。スノーシューの八ノ字歩行で登り続けることができたが、山頂付近の林が迫ってきた所では傾斜も増して、ストックでの確保にも気を使うようになった。振り返ると、雪稜の上に足跡が長く続き、その向こうにトンエルが口を開けていた。
 傾斜が緩むと、ナラやブナの混じった林が広がるようになった。木の間隔も開いて、気持ちの良い林であった。すこしでも楽なように、大きくジグザグを切りながら登り続けた。山頂かと思った所は尾根の張り出しで、黒森山の山頂は、幅広の尾根をたどった少し先であった。
 黒森山の山頂は、木立に囲まれて、東方面の展望が開けていた。新潟方面の展望のために、西側に少し下ってみると、雪原に出て、遮るもののない展望が広がっていた。一際目を引くのは、笠倉山を従えた御神楽岳の姿であった。その左手に広がっているのは、沼ノ峠山から鍋倉山にかけての山塊であろう。川内山塊の鍋倉山も大きな姿を見せて、その左に遠い山は矢筈岳と青里岳であろうか。北に向かう県境線の先には、土埋山が、きれいなピラミッド型の山頂を見せていた。予想していた以上の素晴らしい展望であった。
 西からの風が冷たかったため、山頂に引き返し、日溜まりに腰をおろして休憩にした。県境線上の山としては、低い標高の山であるが、手軽に登ることができることから、もっと知名度が上がっても良い山である。
 下りは、雪綾からのスリップの危険性を避けて、左にコースを取って、雑木林が広がっているトンネル上部に通じる尾根を目指すことにした。急な下りも、スノーシューのテールが雪に食い込んで、順調に下ることができた。このスノーシューは、結構急斜面にも強いようである。谷間の雑木林を下って、沢形が明瞭になる前に左の尾根に上がって杉林に入ると、トンネル上部に下り立つことができた。登りに1時間かかった所が、30分で下りることができた。後は、雪に埋もれた車道を歩いて、車まで戻ればよかった。
 黒森山は、単独で登っても面白い山であるが、県境縦走のための入口にも使える山である。土倉方面に歩いたとして、西側を通過している林道がどこまで除雪されているか気になるところである。時間も早かったことから、偵察をしていくことにした。栄山丙の田沢集落を過ぎて、送電線が図上を通過する所で除雪は終わっていた。距離的には、荒沢から黒森山を経て土埋山の山頂を越して下山というのに、丁度よさそうな距離である。いつか実現してみたいプランである。

山行目次に戻る
表紙に戻る