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谷川岳環状縦走(白毛門〜谷川岳)


【日時】 2001年9月29日(土)〜30日(日) 前夜発1泊2日(テント泊)
【メンバー】 単独行
【天候】 29日:晴 30日:曇り

【山域】 谷川連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 白毛門・しらがもん・1720m・なし・群馬県
 笠ヶ岳・かさがたけ・1852.1m・三等三角点・群馬県
 大烏帽子・おおえぼし・1934m・なし・群馬県
 朝日岳・あさひだけ・1945.3m・二等三角点・群馬県
 七ツ小屋山・ななつごややま・1674.7m・三等三角点・新潟県、群馬県
 武能岳・ぶのうだけ・1759.6m・三等三角点・新潟県、群馬県
 茂倉岳・しげくらだけ・1977.9m・三等三角点・新潟県、群馬県
 一ノ倉岳・いちのくらだけ・1974.2m・一等三角点補点・新潟県、群馬県
 谷川岳オキノ耳・たにがわだけおきのみみ・1977m・なし・新潟県、群馬県
 谷川岳トマノ耳・三等三角点・1963.2m・・新潟県、群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/越後湯沢、四万/茂倉岳、水上
【ガイド】 アルペンガイド「谷川岳と越後の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「谷川岳・苗場山・武尊岳」(昭文社)
【温泉】 谷川温泉 湯テルメ谷川 500円 

【時間記録】
9月28日(金) 9:00 新潟発=(関越道、水上IC、R.291 経由)=23:50 土合白毛門登山口
9月29日(土) 5:35 土合白毛門登山口―7:36 松ノ木沢ノ頭〜7:42 発―8:26 白毛門〜8:36 発―9:32 笠ヶ岳〜9:41 発―10:14 大烏帽子〜10:18 発―10:52 朝日岳〜11:06 発―11:29 ジャンクションピーク分岐―12:56 清水峠〜13:11 発―13:33 冬路ノ頭―14:05 七ツ小屋山〜14:15 発―14:51 シシゴヤノ頭分岐―15:06 蓬峠 (テント泊)
9月30日(日) 5:20 蓬峠発―6:06 武能岳〜6:10 発―6:40 笹平―7:45 茂倉岳〜7:54 発―8:11 一ノ倉岳―8:40 ノゾキ―9:12 オキノ耳〜9:15 発―9:26 トマノ耳〜9:53 発―10:19 天狗の泊まり場―10:41 熊穴沢避難小屋―11:01 天神峠分岐―11:07 田尻尾根分岐―11:15 天神平=(谷川ロープウェイ)=11:35 ロープウェイ土合口駅―11:49 土合白毛門登山口=(往路を戻る)=15:10 新潟着

 谷川連峰は、谷川岳を中心として、東に向かって万太郎山、仙ノ倉岳、平標山、三国山と続く稜線と、一ノ倉岳、茂倉岳、武能岳、七ッ小屋山、朝日岳、笠ヶ岳、白毛門と湯桧曽川の源流部を取り巻く稜線の二つに分けることができる。共に谷川連峰縦走路として親しまれているが、前者は主脈縦走、後者は馬蹄形縦走路と呼ばれている。
 白毛門には、1996年5月25日に登ろうとしたが、残雪のために敗退し、そのままになっていた。再度の挑戦は、谷川岳までの環状縦走として歩くつもりで、それも晴の日に登って谷川岳の岩壁を眺めようと心に決めていた。昨年の9月9日〜10日に平標山から茂倉岳までの縦走路を歩いており、次は環状縦走路を是非とも歩いて見たかった。秋晴れの期待できそうな週末が巡ってきたので、環状縦走に出かけることにした。単独行のテント泊として出かけることになったが、今年の夏に北アルプスを歩いて、単独行のテント泊にも大分慣れてきた。環状縦走といっても、白毛門から朝日岳の間を除けば、各ピークや峠はすでに踏んでいるコースであり、様子は判っていたので気は楽であった。
 一週前の日光に続き、再び谷川岳のトンネルを越すことになった。水上のコンビニで夜食を買い、土合橋手前から白毛門登山口のある大駐車場に車を乗り入れた。数台の車が停まっていたので、静かそうな隅に車を停めた。谷の上には美しい星空が広がり、明日の晴天は確実のようであった。いつものように、寝酒代わりのビールを飲んでから眠りについた。
 薄暗い内に起き出したものの、なんとなく準備に手間取り、歩き出しは、そう早いともいえない時間になった。登山口から入ってすぐの東黒沢には、丸木を渡して仮の橋が架けられていた。尾根に取り付くと、すぐに急な登りが始まった。周囲には美しいブナ林が広がっていた。テント泊の荷物は重かったが、急な登りでも一歩ずつ順調に足を出すことができた。先回の敗退山行のおかげで様子が判っているのも、役に立っていた。高度を稼いでいくと、谷川岳の岩壁が姿を現してきた。先行の日帰り組を二組追い抜いたが、こちらの荷物も重く、引き離すまではいかなかった。先回の引き返し地点も判らないままに高度は上がっていった。鎖がかかった岩場が現れ、それを乗り越した上からは、谷川岳の岩壁の眺めが広がった。マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢といった谷が刻まれ、垂直に切り落ちた岩壁が広がった、写真でもお馴染みの風景が目の前にあった。カメラを構えて写真撮影に余念がないうちに、日帰り組みに追い抜かれた。これだけの風景を見て、写真も撮らないとはもったいない。山頂での証拠写真しか興味がないのだろうか。
 鎖場のすぐ先で松ノ木沢ノ頭に到着した。白毛門の山頂まで続く尾根の眺めが一気に広がった。右手の斜面には、ジジ岩やババ岩が仲良く並んでいるのを眺めることができた。斜面を覆う樹木の紅葉も始まっていた。白毛門の山頂までは、240mの標高差が残されており、迫力のある谷川岳の岩壁も眺めながらひと休みするのに良いピークであった。白毛門へは、周辺の展望が開けているものの、きつい登りが続いた。ジジ岩やババ岩が足元に遠ざかり、露岩帯を巻きながら小さなピークを越していくと、白毛門の頂上に到着した。
 白毛門の山頂は、小ピーク状で狭く、展望盤が置かれていた。谷川岳の東面の岩壁の眺めに加えて、笠ヶ岳から小烏帽子、大烏帽子と続く稜線の眺めに、目を奪われた。緑の笹原の中に、黄色に変わった草原が入り交じり、黄色や赤に染まった灌木が点在していた。ここまでは登りに専念してきたが、この先はカメラを首に下げての、散策モードになってしまった。白毛門からは一旦下った後に、紅葉に染まった尾根の登りに、ひと汗流すことになった。つんと尖った笠ヶ岳の山頂に向かって笹原の中に一直線に伸びる登山道は、見た目には美しいが、登るとなると、なかなか大変であった。
 笠ヶ岳の山頂は、広場になって、周囲の展望を眺めながらひと休みするのに良い所であった。谷川岳の岩壁の眺めも、北側の芝倉沢が加わって、微妙に変化してきた。小烏帽子、大烏帽子といったピークを連ねた稜線の向こうに朝日岳のゆったりした山頂が姿を現してきた。清水峠や蓬峠も目に入ってきたが、まだまだ遠く、頑張って歩く必要があった。
 笹原を少し下った所に、かまぼこ型屋根の笠ヶ岳の避難小屋があった。小烏帽子から大烏帽子の間は、小ピークが連なり、どこがどこといった標識も立てられていなかった。体力的にはきつかったが、危険な所は無かった。大烏帽子から一旦下り、ゆるやかに登っていくと、ようやく朝日岳の山頂に到着した。
 朝日岳は、清水から日帰りで往復したことがあり、これが二度目になった。途中で追い抜いていった土合からの日帰り組も、朝日岳までで、ここから引き返すようであった。今日中に歩かなければならない距離という点では、土合まで来た道を引き返すよりは、蓬峠まで進む方が楽といえようか。三角点の脇には石のお地蔵様が置かれていた。先回は、ガスのために周囲はほとんど見えなかったが、今回は、晴天のもと、上州武尊山や、至仏山、燧ヶ岳、苗場山、越後駒ヶ岳といった山を遠望することができた。山頂直下の草原は、黄金色に輝いていた。普通だと、ここでビールということになるのだが、今日はテン場まで我慢するしかないのが少し残念である。
 朝日岳から草原を抜けて、ジャンクションピークを越すと、巻機山との分岐に出た。今年の5月3日〜5日に歩いた思い出の縦走路である。無雪期はどうかと覗いてみたが、登山道は完全に笹に覆われていた。清水峠へは、標高差400mの急な下りとなる。登りに使う時は苦労する尾根であるが、下りのために、風景を眺めながら歩く余裕があった。右の谷越しには、大烏帽子山、檜倉山、柄沢山、巻機山とピークが並ぶ稜線が長々と続いていた。ミニチュアのように小さく清水峠の巡視路小屋も目に入ってきた。七ッ小屋山の右肩からは、マッターホルンに例えられる大源太山の岩峰が頭を覗かせていた。
 清水峠手前の高台に立つ鉄塔の下に一団の人が休んでいるのが目に入ってきた。鉄塔に到着してみると、作業員が昼の休憩中であった。周囲には有機溶媒の臭いが立ちこめていたので、鉄塔の塗り替えでもしていたのであろうか。白沢避難小屋には、誰もいないようであったが、巡視路小屋はめずらしく戸が開いており、作業員が出入りしていた。冬の訪れの前の保守を行っているようであった。小屋の前の草地に腰を下ろして、地図を開いた。もうひと頑張りして蓬峠まで進んでおくと、明日が楽になる。時間的にも問題は無さそうであった。
 清水峠からは、冬路ノ頭に向かっての登りが始まった。笹原の中に付けられた一直線の登りは辛いものになった。最近の山行報告を読むと、登山道に笹が被っていたようであるが、きれいに刈り払いされていた。ただ、刈り取られた葉が登山道を厚く覆い、足もとの様子が判らなくなっていたので、注意しながら歩く必要があった。振り返ると、朝日岳から笠ヶ岳に至る稜線が横に長く広がっていた。冬路ノ頭から七ッ小屋山の間は、まだ歩いていない区間であった。今度の縦走路は、半分以上は歩いており、断片化した区間をつないですっきりさせることが目的のひとつになっている。冬路ノ頭からは、右手に大源太山を眺めながらのゆるやかな稜線歩きが続き、ひと登りして右手に大源太山への登山道を分けると、その先で七ッ小屋山の山頂に到着した。ようやくこの日最後のピークに到着することができた。ひと休みの後に、緩やかな笹原を辿っていくと、蓬峠に到着した。
 まずは、蓬ヒュッテでテント泊の受付をした。300円の料金は、他の相場の500円よりは安かった。どこに張っても良いと言われ、かえってどこにしようかと迷うことになった。草地の上は寝た感触は良さそうであったが、少しでこぼこしていた。結局、砂地の上に張ったが、日が暮れるなり夜露が下りてきたことから、テントを出入りする際の足元の濡れ防止のためには正解だったようである。夜までには六張りのテントが並んだ。水汲みには、土樽側に出かけたが、10分近くの下りになった。土合方面の方が標高差は少なかったのかもしれないが、水も足りて、それ以上の水汲みには出かけなかった。夜の冷え込みは、一週前の日光ほどではなかった。
 4時に起床し、朝食とテントの撤収も段取りよく終え、薄明るくなった時刻に出発できた。朝一番の仕事は武能岳への登りになった。230m登って160m下り、380m登るというのが、茂倉岳までのプロフィールである。登る途中振り返ると、一面に広がる笹原の中に、蓬ヒュッテが佇んでいた。蓬峠は、谷川連峰の中でも屈指の笹原の美しい所であるが、特に武能岳への登りの途中からの眺めは素晴らしい。武能岳は、単独で目的地となる価値のある山だと思うのだが、知名度が低いのは不思議である。北の肩に登り着いてから小ピークを越していくと、武能岳の山頂に到着した。武能岳から茂倉岳に続く稜線が目に入ってきた。鞍部の笹平にかけては、急な下りが続いていた。
 足元に注意しながら下り、朝一番の働きで獲得した高度をほとんど無くしてしまった。鞍部付近は、その名前通りに笹原が広がっていたが、小さなアップダウンがあり、なかなか茂倉岳への登りが始まらなかった。茂倉岳への登りは、忍耐の登りになった。途中で振り返ると、武能岳の稜線にガスが流れるようになった。朝日岳方面も雲海に山頂が頭を出した状態に変わってきた。今日の天気は下り坂のようで、早めに切り上げた方が良さそうであった。一旦肩の部分に出たものの、茂倉岳の山頂までもうひと登り必要であった。
 茂倉岳の山頂に到着してほっとひと息ついた。環状縦走での最高点は、谷川岳でも朝日岳でもなく、茂倉岳である。後は、谷川岳までそう大きな高低差はない。ひと休みした後、谷川岳へ向かった。一旦下った後に緩やかに登り返した一ノ倉岳の山頂には、クライミングギアを身につけた一団が休んでいた。まだ朝早い時間であることからすると、夜は岩壁の途中でビバークしたのであろうか。一ノ倉岳から先は、一ノ倉沢の岩壁を見下ろしながらの歩きが続いた。オキノ耳への登りにかかると、足場が少ない岩場が現れたが、登りにとるぶんには問題は無かった。
 オキノ耳に到着して休んでいると、30人程の団体がトマノ耳からやってきた。これはかなわぬとばかりに、入れ違いにトマノ耳に移動した。トマノ耳は、幸いにも、数名の登山者しかいなかったので、腰を下ろし、ビールで縦走の終わりの乾杯をした。気温は低く、あまり美味しいビールでは無かったが、縦走の間持ち歩いていたビールなので、山の上で飲まないともったいなかった。断続的に登山者が登ってきたが、直にオキノ耳に進んでいって、静かな山頂であった。平標山方面の稜線には、風が流れるままに、白い滝状に雲がかかっていた。
 谷川岳まで歩いてきて縦走は終わったが、どのコースで下山するか迷っていた。以前谷川岳に登った時は、厳剛新道を使ったため、西黒尾根は歩いていなかし、もっとも一般的な天神尾根を歩いていなかった。残雪歩きなどを考えると、天神尾根は歩いておく必要があり、今回は荷物も重いことから、少し横着を決め込んで天神尾根を下ることにした。
 肩ノ広場から天神尾根への下りに入ると、斜面一面に土砂流出防止の柵が渡され、登山道は丸太の段々に整備されていた。丹沢の大倉尾根とみまがうような風景であった。頂上近くになっての段々登りは、足に堪えそうであった。初心者コースの天神尾根といえども、なかなか大変そうであった。谷川岳には大勢が登ってきていたので、天神尾根は楽々コースと少し勘違いをしていた。一気の下りが続いた。途中でお疲れモードの登山者が多かった。大勢の登山者が登りの途中であったので、良い時に谷川岳の山頂に到着したようであった。先に下山を開始していた団体を追い抜き、快調に下りを続けた。途中で鎖場も現れたが、なくてもかまわないような鎖であった。
 尾根の傾斜がゆるむと林に囲まれた熊穴沢避難小屋に到着した。この付近の登山者が、登りの最後尾のようであった。天神峠への道を右に分けて巻き道を進むと、ロープウェイの山頂駅に到着した。山頂駅一帯には大勢の観光客が散策していた。下りのロープウェイに乗り込み、一気に下界へ。このスピードを考えると、1000円の料金は、しかたがないというべきか。ロープウェイの山麓駅から白毛門登山口までの15分程の車道歩きが、環状縦走の最後の歩きになった。
 谷川温泉の湯テルメ谷川で汗を流し、早い時間に家に戻ることができた。

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