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城山(鳥坂城跡)、高床山、城ヶ峰
鋸岳、雨飾山


【日時】 7月14日(土)、15日(日) 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 7月14日 雨後晴、10日 晴

【山域】 妙高連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 城山(鳥坂城跡)・じょうやま(とっさかじょうせき)・347.5m・三等三角点・新潟県
 高床山・たかとこやま・527.7m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/飯山/猿橋
【ガイド】 HP百山百色

【山域】 西頸山地
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 城ヶ峰・じょうがみね・260.3m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/高田西部/名立大町
【ガイド】 HP百山百色
【温泉】 海テラス名立ゆらら 735円 貸しタオル付き

【山域】 海谷山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 鋸岳・のこぎりだけ・1631.0m・三等三角点・新潟県
 雨飾山・あまかざりやま・1963.2m・二等三角点・新潟県、長野県
 【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/小滝/越後大野、雨飾山
【ガイド】 アルペンガイド「妙高・浅間・志賀」(山と渓谷社)
【温泉】 雨飾山荘 500円 上がり湯無し

【時間記録】
7月14日(土) 6:30 新潟発=(北陸自動車道、上越IC、R.18、寺町、R.292、鳥坂 経由)=10:14 高床森林公園テニスコート跡―10:21 林道終点―10:24 屋敷跡分岐―10:34 鳥坂城跡本丸〜10:36 発―10:42 林道終点―10:51 高床森林公園テニスコート跡=11:43 高床山林道入口先―12:12 高床山〜12:26 発―12:52 高床山林道入口先=(鳥坂、R.292、寺町、R.18、下源入、R.8、名立大町 経由)=14:21 筒石海岸駐車場―14:27 筒石中学校裏―14:53 山道終点広場―15:03 城ヶ峰〜15:13 発―15:18 山道終点広場―15:36 筒石中学校裏―15:44 筒石海岸駐車場=(R.8、糸魚川、R.148、根小屋、梶山 経由)=19:30 雨飾山荘
7月15日(日) 4:22 雨飾山荘発―5:17 第一の沢―5:30 第二の沢―5:52 稜線分岐―6:46 鋸岳〜6:54 発―7:40 稜線分岐―8:23 小ピーク―9:22 金山分岐〜9:40 発―10:22 笹平分岐〜10:27 発―10:32 雨飾山荘分岐―10:54 雨飾山〜11:48 発―12::00 笹平〜12:45 発―12:51 雨飾山荘分岐―13:25 中ノ池―14:41 雨飾山荘=(梶山、根小屋、R.148、糸魚川IC、北陸自動車道 経由)=18:20 新潟着

 高床山は、妙高山麓にある二本木の東に広がる関川左岸にある山である。城山は、高床山の北に隣り合うピークで鳥坂城が置かれていた。山頂一帯には高床山森林公園が設けられ、城山へは遊歩道が整備され、また高床山の山頂には林道が通じている。
 城ヶ峰は、能生の筒石港の内陸部に位置し、日本海に臨むピークである。その名前からして城が置かれていたと思われるが、山頂近くまで山道が通じているものの、由来を記した標識といったものは無い。
 海谷山塊は、妙高連峰の北に広がる山群の総称であり、駒ヶ岳、鬼ヶ面山、鋸岳、烏帽子岳、阿弥陀山、昼闇山といった山が含まれている。この山塊の特徴は、険悪な岩壁を屹立させていることである。周囲には妙高連峰や白馬連峰といった人気のある山があり、それに挟まれているために登山者に敬遠されてか登山道のある山は少なく、川内山塊と似たような不遇の山塊になっている。
 妙高連峰西端の雨飾山は、百名山に選ばれていることもあり、交通の便は良いとはいえないにもかかわらず、人気の山になって、登山道が四方から開かれている。そのうち、雨飾山荘から鋸岳への分岐を経て雨飾山に通じる北東稜と呼ばれるコースがある。分岐から稜線を北に辿れば鋸岳に通じており、二つの山を結んで歩くことができるものの、歩く者は少ない。
 金曜日は納涼会ということで飲み過ぎてしまって、土曜日の歩きは期待できそうになかった。日曜日に頑張ることにして、日帰りの山を考えた。私も入っている山の集まりのトントンさん一行が雨飾山に行くというのを聞いて、今年の課題と思っていた鋸山から雨飾山の周遊コースを歩くことにした。とりあえず土曜日は、上越方面の低山に登ることにした。
 土曜日は、やはり飲み過ぎて、さえない頭での出発になった。飲み放題ということで、ビールのカクテルなどというものを飲んだのが余計に悪かったのかもしれない。おまけに高速道に乗るなり、激しい雨になり、こんなことなら家で寝ていたのにと、パーキングで車を停めてもうひと寝入りを決め込んだ。上越に近づくと、ようやく雨が上がったものの、高い山の頂は暑い雲に覆われていた。これでは、高い山や藪こぎのある山は無理そうで、遊歩道が整備されているような山ということで、高床山を目指すことにした。
 鳥坂の道路脇には、高床森林公園と書かれたリスの人形の看板が置かれていた。舗装された狭いながら良い道が続き、高度を上げていくと森林公園に到着した。山頂一帯は、何カ所かの駐車場が設けられ、テニスコートも備えられたキャンプ場になっていた。園内の案内図を見ると、第三駐車場の脇から延びる林道の先が鳥坂城跡の本丸のようであった。未舗装の林道を進むと、コンクリートで固められた広場に出た。ここは案合図によればテニス場のようであったが、現在では使われていないようであった。その先の林道は荒れているようなので、ここから歩き出すことにした。
 草地の中に付けられた林道を進んでいくと、下り坂になった。少し不安を覚えるようになる頃、林道終点広場に到着した。本丸跡200mという表示があり、左に幅広の道が、登り坂で続いていたので、よく確かめないでその道に進んだ。僅かな歩きで尾根に乗ったと思うと、分岐にでた。また標識があり、本丸まで300mとあった。どうやら、この道を進んでいくと、狼煙台を経てキャンプ場のトリムコースに戻ってしまうようであった。右手に別れる道には、屋敷跡を経て本丸跡とあったので、この道を進むことにした。雑木林で囲まれた道を進んでいくと、深い空堀跡に出た。丸太の梯子が掛けられていたので、滑らないように注意して乗り越した。続いて、もうひとつ空堀を渡ると、鳥坂城跡の本丸に到着した。城跡に相応しく、高田や南葉山方面の展望が開けた草地の広場になっていた。傍らには鳥坂城跡の石碑が立っていた。
 一旦雨が止んで油断し、手ぶらで歩いてきたのだが、再び雨が降り始めた。急いで引き返すことにした。最初の空堀を過ぎた所から左に分かれる山道に進むと、林道終点広場に戻ることができた。広場から下り気味に続いている山道が、本丸まで200mのコースであった。
 車を置いた広場に戻って、稜線伝いのコースを確認することにした。コンクリート広場を横切って、草地に入ると、道が続いていた。この道の方が、歩くには気持ちよさそうなので、林道と合わせて、周遊コースとして歩くと良いかもしれない。
 雨はすぐに上がったが、草も濡れているので、車の中でひと休みしてから高床山に向かうことにした。キャンプ場の先へと林道を進むと、少し下った所で、高床山林道が右に分かれた。入り口付近の林道の様子は良さそうだったため車を乗り入れたが、路面の状態は悪く、すぐに後悔することになった。なんとか車の方向転換できる所で、車を諦めて歩き出すことにした。林道の周囲は、雑木林に囲まれて、新緑や紅葉の季節なら、それなりに楽しめる道なのかもしれないが、雨上がりで蒸し暑く、汗が噴き出てきた。カーブを交えながら、林道は長く続いた。
 高床山の山頂は、土の露出した広場になって、左右の高みにそれぞれ無線中継基地が置かれていた。左手の中継基地に向かって踏み跡を辿っていくと、右の藪に踏み跡が分かれ、その中に三角点が置かれていた。右手の広場に向かうと、古びた東屋があったので、ひと休みした。斑尾山の山頂は見えたものの、妙高山の山頂は雲に隠されていた。
 車に戻り、その後の予定を考えた。もう一山登りたかったが、下山後の温泉も考える必要があった。名立近くの城ヶ峰が歩く時間もほどほどで、近くに温泉もあって都合がよさそうであった。
 直江津に戻り、海岸線に沿って延びる8号線をドライブした。途中、道路を横断するビキニのお姉さんもいて、汗をだらだら流しての山歩きよりも、海水浴の方が楽しそうであった。太陽がまぶしい筒石の国道脇の駐車場に車を停めた。海水客用に駐車場を整備してあるようで、オートキャンプをきめこんでいる家族連れもいた。
 国道を横断して、筒石中学校をめざして坂を登った。高台に立つ中学校の裏手に回り込むと、車道のカーブ地点から尾根の末端めがけて、ジグザグの山道が始まっていた。ひと登りすると、傾斜地に作られた小さな畑が現れたが、さらに進んでいくと、杉の植林地の中の道になった。途中で枝道が分かれたが、山道は、稜線の一段下に続いていた。正面に城ヶ峰の山頂を眺めると、山道は、左に方向を変え、間伐された杉林の中の広場で終わった。高みに向かって、踏み跡が続いていたので、これを辿ることにした。ひと登りで踏み跡は落ち葉の下に消えたが、杉林の中は、歩くのに支障は無かった。登っていくと、作業道具入れの小さな小屋があり、その先が城ヶ峰の山頂であった。
 城ヶ峰の山頂は草が刈り払われた広場になっていた。三角点探しが始まった。最近は、山頂に着いても、ゆっくり休むというよりは、三角点探しで時間を費やすことの方が多いような気がする。刈り払われた草が邪魔をして三角点はなかなか見つからなかったが、航空測量の板が泥にうまっており、そこから捜索範囲を広げていくと、幸運にも三角点を見つけることができた。汗だくになって車に戻り、さっそく温泉へと移動した。
 夕食を取り、糸魚川で買い物をしてから、雨飾山草に向かった。梶山の先の林道は長かったが、舗装道路が終点近くまで続いた。雨飾山荘へは、暗くなってからの到着になった。雨飾山荘の駐車スペースは、10台ほどであまり広くなく、その奥の堰堤下の河原も駐車場として使われているようであったが、ガードレールの無い沢の縁の急坂を登るのは、少々危なそうであった。駐車スペースは、傾斜しており、車で寝るには具合が悪かった。夜になって、雨飾山荘のキャンプ場に入るのも遅すぎた。途中で、道路脇にテントを張るのに都合の良さそうな空き地があったのを思い出して、そこまで戻ることにした。
 草地の空き地にテントを張って、夜食を食べながらビールを飲んだ。満点の星空が広がり、鬼の角のように二つ並んだ鬼ヶ面山のピークが、空に黒いシルエットを刻んでいた。明日の晴天を祈りながら眠りについた。夜中に、貸し切りバスが上がっていき、雨飾山荘前で野宿をしなかったのは正解であった。登山口の駐車場は、夜中にも車が到着するので、うるさくて安眠できないことが多い。しかも、このバスは、冷房のため、夜中エンジンをかけっぱなしにしていたようである。
 朝一番に、雨飾山荘前の駐車場に車を移動した。朝食をとっているうちに明るくなった。夜のうちは気が付かなかったのだが、鋸岳への標識が、奥の駐車場をさして立っていた。この先は、鋸岳と雨飾山の分岐まで標識はなく、ガイドの記述が頼りの歩きになった。
 まずは、奥の駐車場脇の鉱度倉沢を渡り、対岸の流水溝の左を登るようであった。護岸工事によってコンクリートで固められた斜面に一本流水溝が走っていた。沢は、濁っているものの水量は多くなく、飛び石伝いに渡ることができた。コンクリート壁に段差があって登るのが難しかったが、流水溝の所が低く切れ込んでいて、そこから上がることができた。流水溝の左側に草を刈り払った道が続いていた。直線的に登っていくと、二つ目の段で木が横に並んで植えられており、左方向に道が付けられていた。護岸壁上部を横切っていくと、尾根の末端に出て、山道が始まった。護岸工事に伴って、尾根の末端が、登山道とともに削られてしまったような感じであった。
 尾根の周囲には、立派なブナ林が広がっていた。薄暗い林を登っていくと、鳥の声もしだいに賑やかになっていった。ひと登りして雨飾山から落ち込む尾根を乗り越すと、歩きにくいガレ状の道になった。刈り払われた草が登山道の上を覆っているので、余計に注意がいった。足が石の間の隙間に落ちて前方につんのめった拍子に、頭を木の根にぶつけたが、たんこぶですんだのは幸いというべきであろう。左手に広がる谷の向こうには、鋸岳が鋭い山頂を天に向かって突き上げていた。
 ほぼ水平な道が続いた後に、一旦下ると。最初の沢に出た。またげる程の水量で、横断には問題はなかった。水は濁っていたため、そのまま先に進んだ。二番目の沢は、水が澄んでいたので、水を飲みながらひと休みした。冷たい水が美味しかった。気温も早くも上がって、暑い一日になりそうであった。鋸岳と雨飾山の分岐までは、そうたいした標高差はないようであったが、沢の横断の度に上り下りがあるため、なかなか、はかどらない道であった。続いて涸れ沢を渡ると、高みに向かっての登りが始まり、ひと登りで稜線上の分岐に出た。
 分岐から両方向に向かって良い道が続いていたが、雨飾山方面には、「雨飾山〜鋸岳の間 落石の恐れがあるため通行できません この先約2km」という看板が立てられていた。山で2kmというと、なかなかの距離で、ちょっと見てくるというわけにはいかない。トントンさん一行と雨飾山の山頂で落ち合いたいと思っていたが、それにはどうしてもこの道を通る必要があった。登山口にこのような通行止めの看板が無かったことが不思議であった。また、本当に通行止めなら、この分岐にロープを張って、通行止めの表示があってもよさそうなものである。ダメもとで、雨飾山を目指すことにして、ともかく、鋸岳を先に登ることにした。
 鋸岳への道は、ブナ林に囲まれた緩やかな登りがしばらく続いた。見上げるような鋸岳の山頂が頭上に迫ってくると、登山道の傾斜も増してきた。山頂が近づいてきたところで、尾根をふさぐような岩が現れた。いよいよ、岩場の始まりと思って、ストックを縮め、ザックにくくりつけた。岩を左に巻くと、草付きの登りになり、右に回り込んで尾根に再び乗った。草付きは、シロウマアサツキやシロバナノホタルブクロ、ミヤマクルマバナ、オオカサモチ、タカネナデシコの見事なお花畑になっていた。とはいえ、足場が悪いので、写真撮影もままならなかったのだが。最後の岩場は、コンクリートが風化して、砂利が飛び出しような岩が露出していた。ロープと鎖がかかっていたが、ガイドブックには、支点が細い樹木のため、あまり体重を掛けないように書かれていた。クライミングの要領を思い出しながら岩を登ったが、初級の岩場といったところか。トップロープではなく、手で握りしめた細いロープが命綱となると、慎重にならざるを得ない。岩場を上り詰めると、山頂の一画に到着した。登山道を夏草が覆い隠しており、すぐ目の前の山頂めざして、足先で草をかき分けながら進んだ。
 鋸岳の山頂は、数人が立てるくらいで狭く、その上からは360度の展望が広がっていた。目の前には朝日に輝く雨飾山が大きく広がっていた。その麓には雨飾山荘も見下ろすことができ、山腹を歩いてきた登山道がながながと横切っていた。雨飾山の右手には、残雪で白く光る白馬連峰が雲の上に浮いていた。振り返ると、阿弥陀山や烏帽子岳といった海谷山塊の山も眺めることができた。駒ヶ岳は、鬼ヶ面山の陰になっていたが、その間には険しい稜線が続いているようであった。素晴らしい展望のピークであったが、下りの岩場の下降を考えると、ゆっくりとビールでもという訳にはいかないピークであった。
 先も長いため、早々に下山することにした。岩場は、手足をフルに使って下ったものの、足場に乏しいため、ロープに頼る所も出てしまった。草付きも、滑らないように注意する必要があった。なかなか手強い山であった。岩を回り込むと、あとは危険のない尾根道になった。
 分岐に戻って、今度は雨飾山方面に向かった。稜線通しのしっかりした道が続いたが、歩く者は少ないのか、落ち葉が厚く積もっていた。しばらくは、樹林帯の展望の利かない道が続いた。露岩帯の稜線に出て、その先で小ピークの上に立つと、周囲の展望が広がった。鋭い山頂を持った鋸岳が目の前に聳えていた。先程までその上にいたとは、ちょっと不思議に思われる眺めであった。鋸岳を中心に、鬼ヶ面山や駒ヶ岳、阿弥陀山といった海谷山塊の山々が並んでいた。雨飾山の山頂は、笹平の肩部によって見えなくなってきていた。
 この先は稜線歩きとなり、続いて小ピークの乗越しが現れた。岩の積み重なったピークで、ここからの眺めも良かった。一段高くなった稜線が近づいてくると、オーバーハングした柱状節理の岩場の下に出た。太陽に照らされた稜線歩きで暑くなり、谷から吹き上げる風にあたりながらひと休みした。岩壁を右にトラバースすると、急斜面に鎖が垂れ下がっていた。足元が不安定で、最後は木の枝に足をかけて這い上がった。鎖の支点の上に岩が積み重なっていたので、ここが落石注意の箇所だったのかもしれないが、石は落ちきって一応は安定しているようだった。横に渡された鎖を頼りにトラバースしていくと、梯子が現れた。ここを登り切って一段上の稜線に出ると、難所も終わった。さらに4つ程の小さなピークを越していく必要があったが、それ程の高低差はなく、問題なく歩くことができた。金山からの縦走路が通じている茂倉尾根が次第に近づいてきた。
 一旦下った窪地が、縦走路の合わさる大曲である。昨年、金山から縦走した時に、興味を持って眺めた道をようやく歩くことができた。ここの水場は健在で、細いながら、きれいな水が流れていた。さっそく腹一杯水を飲み、沢の周囲に広がるリュウキンカの黄色い花を眺めながら、一服した。ようやく雨飾山も近くなったが、これから急な登りが待ちかまえているのは、先回の歩きで体験済みである。
 ここにも雨飾山と鋸岳の間の通行不能の看板があり、約1kmと書かれていた。おそらく、岩壁の下のトラバース地点と考えて間違いは無さそうであった。この大曲にしても、笹平から大きく下った地点で、この看板を見たからといって、あっさりと引き返せない。おかしなところにある看板である。
 笹平までは300mの高度差がある。足も疲れてきて、ひたすら忍耐の登りになった。登山道周辺は、幅広く刈り払いが行われていた。見覚えのあるガレ場を通過すると、尾根の登りが続いた。昨年の記憶もそう薄れてはいないのだが、それでも、その上が笹平かと思って、何度か期待を裏切られた。笹平への登りの途中から雲の中に入ってしまったのか、展望はなくなってしまった。
 笹平にでると、小谷方面からの多くの登山者が、行き交っていた。残念ながら、雨飾山の山頂はガスで隠されていた。笹平一帯は、お花畑となり、タテヤマウツボグサ、オニアザミ、オオカサモチ、ハクサンフウロ、ヨツバシオガマ、ミヤマクルマバナ、アカバナシモツケソウが咲いていた。一般コースに出てひと安心して、花を眺めながら笹平の草原を進んだ。
 下山路となる雨飾山荘への分岐をすぎると、その先で山頂への急登がはじまる。団体が草原にザックを置いて登っており、山頂は混み合っているようであった。山頂への最後の登りは、前を行く登山者が遅い歩きであったため、後ろに長い列ができた。雨飾山の山頂は、予想通り、大勢の登山者であふれていたが、記念写真を撮るとそのまま下っていくものも多く、座る場所が無いほどの混みようではなかった。
 トントンさん一行は、11時から12時頃に到着だろうと思い、それに間に合うように朝から歩いてきた。待ち合わせの約束をしたわけではなかったが、腰をおろして一行の到着を待った。ガスの切れ間から笹平を歩く登山者を見下ろすことができた。缶ビールを飲み干し、昼食を終えると、ようやく一行が到着した。山頂は混んでいるため、笹平で昼食をとるつもりで荷物を置いて登ってきたとのことであった。飛び入りということで、全員の記念写真に収まった。山頂からの白馬連峰の展望を楽しみにしていたようであったが、雲は切れそうになかった。
 笹平に一緒に下りて、昼食に付き合った。こちらのような長時間山行とは違って、豊富な食料と酒を持ち上げていた。お相伴にあずかっていると、雲の切れ間から、積乱雲が立ち上っているのが見えた。朝からの気温の上昇を考えると、ひと雨きそうであった。お喋りは賑やかに続いていたが、ひと足早く下山にうつらせてもらうことにした。
 笹平の分岐から雨飾山荘への道に入ると、涸れ沢状の窪地の長い下りが始まった。ロープが何本も付けられており、宙に浮かせた状態になっているのは、残雪に埋まらないようにするための工夫のようであった。石が転がっているために、歩き辛い道であった。涸れ沢を下りきったところの草原にキヌガサソウの群落があったのが、ひとときのなぐさめになった。中ノ池が現れると、登山道は左に方向を変えてトラバ−スした後に、尾根沿いの下りが始まった。急な下りが続き、このコースを登るのは大変そうであった。小谷側からだと、荒菅沢や布団菱の岩壁といった展望地があるのだが、このコースは、ひたすら歩きに専念するしかない。新潟県人としては、このコースを歩いてみる必要はあるのだが、どちらが楽しいかと聞かれれば、小谷側と答えるしかない。
 途中で雷鳴が聞こえ始め、下りの足を速めた。笹平をだいぶ前に出発した団体や、グループを追い越した。尾根道は、途中で鎖場も現れる険しい道で、麓はなかなか近づいてこなかった。雨もぽつりぽつりと落ち始めたが、ひとまずやんでくれた。尾根を右に外してジグザグに下りはじめると、ようやく雨飾山荘が近づいてきた。梶山薬師のお堂の脇を通り、キャンプ場を抜けると、駐車場に戻ることができた。
 車に戻って、ザックを仕舞い、温泉の用意をしていると、本降りの雨が始まった。傘をさして雨飾山荘の温泉につ入りに行った。この温泉の庭先にある露天風呂の都忘れの湯は有名であるが、雷雨の中とあっては、内湯に入るしかなかった。温泉につかりながら、途中で雷雨に捕まって苦労しているだろうなと、とんとんさん一行のことを思った。車を動かしてからも、ワイパーを全速にする必要のある激しい雨が続いた。朝は快晴だったが、午後は雷雨。そろそろ梅雨も終わったようである。
 

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