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高井峠


【日時】 2001年3月24日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 飯豊連峰前衛
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 高井峠・たかいとうげ・788.4m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/大日岳/日出谷
【ガイド】 LATERNE vol.5、新潟の低山薮山、駒文集第六号、越後佐渡の峠を歩く
【温泉】 角神温泉赤湯 200円 石鹸のみ

【時間記録】 6:10 新潟発=(R.49、津川、R.459、角神 経由)=8:08 小荒〜8:22 発―8:32 わさ沢橋―8:43 下平線NO.17鉄塔―9:35 500mピーク―11:03 高井峠〜12:00 発―13:02 500mピーク〜13:10 発―13:34 下平線NO.17鉄塔―13:39 わさ沢橋―13:52 小荒=(赤湯入浴後往路を戻る)=16:30 新潟着

 高井峠は、飯豊連峰から流れ出る実川の左岸にある山で、大段山に向かいあう山である。
 高井峠といっても、普通にいう「峠」ではなく、山である。馬取川の荒沢集落から実川に抜ける道としては、万治峠が知られているが、昔は、このピーク付近に、「高井峠」と呼ばれる峠があったのかもしれない。三角点の点の記で、点名の付け方を見ていくと、峠脇のピークにその峠の名前を付けているものが多い。たとえば、同じ図面中の、馬取集落の南の319.1m三等三角点ピークの点名は「馬取峠」である。本来は、高井山とでも地図には記載されるところが、点名そのままに書かれてしまったのではないだろうか。
 竹ノ倉山に続けて、日出谷の山に出かけることになった。再び快晴の日になった。山肌に残る雪は、二日前と比べても少なくなったような感じがした。日出谷を過ぎ、実川に通じる道に入った。以前に比べて、途中の橋が付け替えられ、栃ノ木清水といった名水が設けられるなど、整備が進んでいた。
 小荒の集落を抜ける所で、この先雪崩の危険性のため通行禁止の看板が出ていた。コンクリートミキサー車が出てきて、車の通行はできるようであったが、工事中のようでもあり、路肩に車を停めて歩き出すことにした。
 高井峠への登山コースは、いろいろ考えられるが、上村さん紹介の、ワタヌキ沢右岸尾根を使うことにした。登り口の橋までは1km弱で、歩いてもたいしたことはなさそうであった。雪も少なくなっていたが、スノーシューを持っていくことにした。
 途中の沢で工事をしており、関係者の車が路肩に並んでいた。大段山への斜面を見上げながら歩いていくと、橋があり、ここがワタヌキ沢のようであった。橋の名前を見ると、わささわ橋とあった。飯豊連峰大地図によれば、ひとつ先の沢がワサノ沢とあり、橋の名前と沢名がずれているようであった。橋を渡ったところにゲートがあり、その先には車が進入できないようになっていた。脇にはスペースもあり、ここまで車で入ることができた。
 尾根末端部の上流部側から杉林を登ると、急登僅かで尾根上に出ることができた。尾根には踏み跡があり、すぐに送電線の鉄塔下に出た。鉄塔には、下平線NO.17というプレートが掲げられていた。鉄塔付近には雪原が広がっていたのだが、尾根の上からは雪が消えて、右手のワタヌキ沢流域の伐採地から広がってきた灌木の薮を避けながらの登りになった。幸い、薮の高さも腰下で、歩く支障にはならなかった。時々左手の雪堤を歩いてみるものの、すぐに雪が割れていたりして、尾根に戻されるということを繰り返した。400m程の高度まで上がると、整備された登山道といってもよさそうな幅の広い道になった。木立の切れ間から大日岳が姿を現し、足を止めて眺めいった。振り返ると、大段山が大きな姿を見せていた。
 470m小ピークからは、傾斜も緩んで、まだ遠い高井峠目指しての尾根歩きになった。左に向かって雪庇が張り出していたが、すでに先端部は落ちており、雪堤の雪も割れ始めていた。尾根が痩せていたり、倒木を避けたりと、細かくコースを変える必要があり、スノーシュー歩きには好ましくない状態であったが、幸い雪もしまって、つぼ足で歩くことができた。
 尾根の左手には、ブナやナラの美しい林が広がっていたが、右手のワタヌキ沢流域の斜面は伐採地になっていた。伐採地は雪に覆われていたので、見た目にはそれ程気にならなかった。ワタヌキ沢左岸の尾根の上部を、林道が越しているのが目にとまった。小荒の集落から556点を通過して高井峠に至る尾根があるが、その南の八ッ目沢流域も伐採地になっているようで、この尾根を登路に選ぶと、伐採地の中を歩くことになって、あまり感じは良くなさそうである。
 小荒の集落からの尾根が目の前に迫ったところで、コースは南東から東に向きを変えて、急登が始まった。尾根沿いにはブナの大木が点在して、目を楽しませてくれた。尾根が痩せた所では雪が完全に消えている所もあったが、薮という程ではなかった。一旦は、山頂到着かと思うと、まだ先であった。
 雪原に飛び出すと、その先が高井峠の山頂であった。山頂は厚い雪庇で覆われているようであったが、形は崩れて段々の付いた稜線になっていた。荷物を落とさないような平坦部を見つけて、腰をおろした。
 素晴らしい展望であった。まず第一に目が引きつけられるのは、裏川の谷奥に、真っ白な姿を見せている大日岳であった。右には、飯豊本山が並んでいるが、ここからでは平凡な姿にしか見えなかった。左に続く稜線の先の鋭いピークを持つ山が烏帽子山のようであった。そこから下がってきた所のピークが、焼曽根山であろうか。筆塚山は目の前であったが、細かい峰が連なって、どこが山頂か判らなかった。実川右岸に続く稜線の向こうには、ひと際白い蒜場山が山頂を覗かせていた。
 飯豊の素晴らしさは、飯豊を眺める展望の山が周囲に幾つもあることであろう。二王子岳、蒜場山、倉手山、鏡山などが、展望の山として人気が高いが、この高井峠もそれらに匹敵する山である。もっとも、雪の無い時期は、灌木に覆われて展望はまったくないともいうので、残雪歩きを行った者のみが味わえる展望のようである。
 東には、高陽山が黒々と大きな姿を見せていた。そことの間の最低部が万治峠であろうか。その右手に見える遠くの山は磐梯山のようであった。南には、兎ヶ倉山が尖った山頂を見せ、遠くに御神楽岳が春霞に浮かんでいた。菅名岳や日本平山といった川内山塊の山も遠くに眺めることができた。稜線は南に向かって続いていたが、大石山は、目立った姿をしていないためか、どのピークかは判らなかった。
 暖かい陽射しに包まれながら、ビール片手に、心ゆくまで山岳展望を楽しんだ。天候に誘われて、新潟周辺の山も大賑わいであろうが、これだけの展望を独り占めとは、贅沢な山頂である。
 下りは、安全第一で、来た道を忠実に戻ることにした。スノーシューは結局お荷物にしかすぎず、冬山は完全に終わったようである。

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