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荒沢山


【日時】 12月17日(日) 日帰り
【メンバー】 峡彩ランタン会会山行26名
【天候】 晴

【山域】 谷川連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 荒沢山・あらさわやま・1302.7m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/越後湯沢/土樽
【ガイド】 岳人1997年12月号
【温泉】 湯沢温泉岩の湯 300円 ボディーシャンプ−・シャンプー

【時間記録】 5:45 新潟発=(関越道、湯沢IC 経由)=8:20 土樽着〜8:55 発―11:53 荒沢山〜13:20 発―14:45 土樽着=(岩の湯入浴後往路を戻る)=18:00 新潟着

 上越国境の蓬峠のすぐ北側から西に延びる尾根を足拍子山稜と呼ぶ。この尾根は、シシゴヤノ頭、コマノカミノ頭、足拍子岳、荒沢山といったピークを連ね、中里スキー場上部の柄沢山で終わっている。この尾根には、かつては登山道が切り開かれていたが、歩く者が少なく現在は廃道になっている。この中で、荒沢山は、土樽駅の向かいに位置し、積雪期の登路として利用されるカドナミ尾根と呼ばれる一本尾根を魚野川右岸に向かって下ろしている。荒沢山は、新潟周辺の登山愛好家には関心の薄い山であるが、アプローチの良い、雪山訓練用の山として関東方面の山岳会に親しまれている。
 今年の4月に棒立山からタカマタギ、日白山を経て平標山への縦走を行ったが、魚野川対岸の足拍子山稜に目が引きつけられた。足拍子岳は難度が高そうだが、荒沢山は雪山訓練のために登られているようなので、登ってみたいと思った。夜の酒の席で、会では冬山訓練として二年続けて大境山に登っているが、歩行時間もかかって日帰りでは山頂を踏めず、12月中旬で雪の量も適当にあって日帰り可能な適当な山はないだろうかという話になった。自分が登りたいこともあって、この荒沢山の名前を挙げて、冬山の訓練山行に使われていることや、この山なら目新しさもあって、大勢の参加者が見込めるだろうと推薦した。幸い、この方面に精通した篠田氏もいることから、今年の冬山訓練の山として、荒沢山が選ばれることになった。
 予想があたったというべきか、急な用事で参加取り止めの人も出たにも拘わらず、26名もの参加者になった。移動性高気圧が日本海を覆い、晴天が期待できる日になった。越後川口付近に近づくと、川霧の上から真っ白な越後駒ヶ岳が姿を現し、車窓からの山岳同定に話が弾んだ。
 車のトラブルがあったものの、少し遅れただけで土樽に到着した。駅への道を分けた先の橋の先は圧雪状態になったため、坂を上った高速下の空き地に車を停めた。先日の谷川岳縦走前夜には、豪雨を避けて、この高架下にテントを張ったので、毎度お世話になる空き地である。
 冬山シーズン初めということで、一年ぶりの装備が多かった。点検してきたつもりでも、プラブーツの紐が切れるというアクシデントが起きて、出発の準備に手間取った。装備の点検も兼ねての冬山訓練が必要な所以であろうか。
 魚野川の対岸には、青空をバックに、荒沢山の稜線が白く浮かんでいた。登りに使うカドナミ尾根もはっきりと目で確かめることができた。距離は短いが、急登の連続であった。登山口の標高は600mなので、荒沢山1302.7mの山頂までは、700mの登りになる。下部の雪は少なそうであるが、中腹からの木々は霧氷に彩られていた。天候の心配もなく、雪山の期待が膨らんだ。
 橋を渡ったところでワカンを装着して歩き出した。雪に埋もれた魚野川右岸の林道を進み、二つ目の沢を渡った所で、右手の高台にある山小屋に向かった。小屋の裏手がカドナミ尾根の登り口である。尾根の末端は扇状に広がっているが、登るにつれて、明瞭な尾根筋が現れてきた。登り始めの雪は少なく、踏み跡の下から落ち葉が現れる状態であったが、直に本格的な雪道になった。木立の枝を払う必要はあったものの、鉈もかなり入っており、薮漕ぎという程のことはなかった。出発時に、単独行が先行していったが、3名グループが追いついてきたので、先に行ってもらった。
 1000m付近で尾根の平坦部に出てひと息入れることができた。松の生えた尾根の先に荒沢山の頂上が近づき、その右手にはキレット状に大小のくびれを連ねた稜線が足拍子岳へと連なっていた。振り返ると、棒立山が鋭い山頂を突き上げ、タカマタギから平標山への連なり、仙ノ倉山、万太郎山といった今年その山頂を踏んだ懐かしい山が目の前に並んでいた。
 先行グループも休みに入っており、我々のグループがトップに立った。ラッセルを交代しながらの登りになった。大人数のため、短い時間で交代ということになり、そのうちトップが回ってきた。後方についていると、ステップの切られた雪道ができていて、ワカン無しでも歩ける状態であったが、いざトップに立ってみると、雪も深くなっており、急斜面の所では雪を抱え込んで、足場を固めながら体を持ち上げる必要があった。前日の飲み会の影響が残っており、すぐに息が上がってしまって交代してしたが、雪の中に道を切り開くラッセルは、少し体験してみるくらいなら楽しい。ひと休みしてから、しんがりに追い越されないうちに歩き始めたが、トップは休み無しで登って行ってしまったようで、一人でのんびりと歩くことになった。
 稜線が目の前に迫ってきた所で、先頭集団に追いついた。小さな岩を右手から抱くように通過する岩場が現れ、その通過に時間が掛かっていた。ワカンを履いているため、足場を慎重に固め、岩角を掴んで慎重に通過した。
 その先で稜線の上に出ると、巻機山や大源太山、七ツ小屋山が姿を現した。そこから左にひと登りすると、荒沢山の山頂に到着した。狭い山頂は、我々や他のグループで満杯状態になった。周囲には360度の素晴らしい展望が広がっていた。青空の下に、白銀に輝く山稜が広がっていた。全員が、荒沢山は始めてということで、この展望に嘆声を上げていた。
 山頂北側の灌木に、荒沢山のネームプレートが取り付けられていた。山頂の三角点はここらだろうというと、さっそくスコップで掘る者がおり、50センチ位の雪の下から偶然のたまものというか、三角点が姿を現した。
 山頂の周辺は切り立っており、灌木に雪が乗って踏み抜くおそれもあり、下ってから昼食ということになった。稜線に上がったところが、緩い雪の斜面になっており、一同腰を下ろしての大休止になった。汗をかいて登ってきたため、ビールが旨かった。晴天の暖かい陽射しの下とはいっても、休んでいるうちに冷え込んできて、早めの下山になった。
 下り口の岩場は、一段下の灌木帯をトラバースして通過した。カドナミ尾根は、下ってみると、なかなかの急斜面の連続であった。途中で、ワカンが緩んだのを期に、坪足で歩くことにした。しっかりした雪道ができており、全く潜らないで歩くことができた。尾根の最後の部分では、雪が落ち葉もろともずり落ちてしまうため、尻餅をつきながらのおっかなびっくりの下りになった。
 順調に登り下りして、最後はゆっくりと温泉に入っても、6時に新潟に戻ることができた。荒沢山は、確かに、雪山訓練には手頃な山であった。


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