0052

大樽山


【日時】 2000年9月30日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 飯豊連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 大樽山・おおだるやま・1100.8m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/飯豊山/えぶり差岳
【ガイド】 新潟の低山薮山(新潟日報事業社)

【時間記録】 5:30 新潟発=(R.7、新発田、R.290、胎内 経由)=7:00 胎内ヒュッテ〜7:17 発―8:42 920mピーク〜8:52 発―10:14 大樽山〜10:44 発―11:49 920mピーク〜12:05 発―13:10 胎内ヒュッテ=(往路を戻る)=15:20 新潟着

 大樽山は、飯豊連峰北部に位置し、杁差岳の南隣の鉾立峰から西に延びる尾根が、胎内川の右岸に至って北に向きを変える所にあるピークである。大樽山への登山道は、最近、ボランティアの人の手によって刈り払いが行われた。

 飯豊連峰は、端山も主稜線の峰々とは違った魅力を持っている。こういった端山は、一般登山道のある山は少なく、細々とした踏み跡を利用できれば幸いといった状態にある。整備しすぎの感のある何々名山、夏場の混み合う飯豊の主稜線もその中に入ってしまうのだろうが、そういった山よりも、登山本来の趣を味わうことができる山が多い。大樽山も、登山道が開かれたといっても、個人の力での道付けで、ルートを見定めながら歩く必要がある。
 昨年、吉田さんが胎内尾根に登った時に、登山道の刈り払いを行っている人に出会い、趣味で胎内尾根の登山道の整備をしていることと、大樽山への道も刈り払ったことを聞いた。その後、大樽山へは吉田さんと鈴木さんが登り、山頂手前までは良い道が切られているという報告があった。登りたい山のリストに大樽山を加えたものの、そのままになっていた。夏も過ぎて、新潟周辺の薮山の季節が巡ってきた。先週は、遠出の山だったので、近くの大樽山に出かけることにした。
 午後から天気は崩れるとの予報が出ていたものの、ひさしぶりに青空の広がる朝になった。胎内渓谷に入ると、風倉山の岩峰が朝日に輝いていた。夏も過ぎて、胎内ヒュッテの周辺の駐車スペースも空きが目立っていた。登山者というよりは釣り人の車が多いようであった。
 大樽山の登り口は、7月に足の松尾根から地神山を登った帰りに確かめておいた。ゲートを抜けて、ヒュッテと反対側に尾根を回り込んだ所、胎内尾根への入口の手前にある。尾根の斜面に、来た方向に戻るような踏み跡が続いているが、良く見ないと判りにくい。踏み跡を辿って尾根の上に出ると、はっきりした道が続いていた。周囲には背の高いブナ林が広がり、林床もツバキやユズリハで、開放的な感じがする尾根であった。地図で予想していたよりも、急な登りが続き、所々尾根の痩せた所も現れた。胎内川沿いの林道が足元に見え、風倉山の山頂を望むことができた。尾根の途中にアンテナが立てられて、この道はその保守道を利用したものだというが、ケーブルが埋められているのを見たものの、アンテナは見落としてしまった。ブナ林が広がる幅広尾根と、灌木の枝を頼りに体を持ち上げる急斜面が交互に現れた。薮の中でガサガサという音がした。鈴を付けてこなかったので、熊だと困るなと思い、ストックで木を叩きながら歩いた。音の主は猿であったが、幸いこちらには無関心で遠ざかっていってくれた。朝方は涼しい程であったが、次第に気温も高くなって、汗を流しての登りになった。
 920mピークに登り着いてひと息つくことができた。背後には黒石山から二王子岳が大きな塊を見せていた。薮っぽくなった尾根を辿り、下降点まで進むと、東と南北の展望が開けた。大樽山は目の前に迫り、その背後には杁差岳の山頂が顔をのぞかせ、山頂の避難小屋もはっきりと見分けることができた。鉾立峰は、大樽山の後ろに隠されていた。大樽山の右手には、大石山から頼母木山、地神山、門内岳と続く飯豊の主稜線の眺めが広がっていた。大樽山の左手には、高倉山から鳥坂峰へと稜線が続いていた。青空のもと、素晴らしい展望を楽しむことができた。
 大樽山は目の前に見えるが、一旦下った後に、痩せ尾根を辿る必要があった。飯豊の山とあって、そう簡単には登らせてはくれず、もうひと頑張りが必要であった。大樽山の下り始めに、岩の露出した斜面があり、その右手のヒドの方が登山道のように見える。間違って下ってしまい、薮をトラバースして、本来の道に戻った。尾根の途中に現れる小さなピークを越したあと、大樽山への登りになった。急坂を終えると、幅広の山頂の一画に登り着いた。登山道は、稜線部から一段下がった所に卷き道が続いていた。稜線部にも踏み跡が続いており、こちらに入ったが、灌木が密で薮漕ぎになったため、卷き道に戻った。踏み跡は少し判りづらくなったが、銀と赤のテープが付けられていたので、それを辿っていけば良かった。
 大樽山の山頂は、三角点の周りが刈り払われた小広場になっていた。薮に囲まれていたが、東方向の眺めが開けて、アゴク峰と杁差岳が目の前に大きく広がっていた。腰を下ろして、静かな山頂の眺めを楽しんだ。山頂から北側に下る踏み跡があり、少し辿ってみると、これは東に続いていた。アゴク峰へ続く踏み跡のようであったが、どこまで続いているのだろうか。いつか鉾立峰まで抜けてみたいものだが。
 山頂を後に下り始めると、単独行が登ってくるのに出合った。この山で人に会うとは思っていなかった。話をしてみると、中条の人で、残雪期に鳥坂峰から鉾立峰まで歩いたこともあると言っていた。大樽山の登山道のことは、地元の人以外はまだそれ程は知られてはいないようである。
 下りは、920mピークへの登り返しと、滑りやすい急斜面が苦労の場所となった。最後は、ブナの森林浴を楽しみながらの下りになった。
山行目次に戻る
ホームページに戻る