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大石山から地神山


【日時】 2000年7月20日(木) 前夜発日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 飯豊連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
大石山・おおいしやま・1567m・なし・新潟県
頼母木山・たもぎやま・1730m・なし・新潟、山形県
地神山・じがみやま・1849.6m・二等三角点・新潟、山形県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/飯豊山/飯豊山、えぶり差岳
【ガイド】 飯豊。朝日連峰を歩く(山と渓谷社)、山と高原地図「飯豊山」(昭文社)

【時間記録】
7月19日(水) 20:30 新潟発=(R.7、新発田、胎内 経由.)=22:00 胎内ヒュッテ  (車中泊)
7月20日(木) 3:30 胎内ヒュッテ発―3:52 奧胎内大橋―4:11 足の松尾根取付〜4:20 発―5:00 姫子の峰〜5:10 発―5:30 岩場―6:19 ひど―7:37 大石山分岐〜7:50 発―8:35 頼母木小屋―9:00 頼母木山〜9:18 発―9:42 地神北峰―9:56 地神山〜10:04 発―10:15 地神北峰〜10:19 発―10:40 頼母木山―(10:45〜11:15 昼休み)―11:23 頼母木小屋〜11:29 発―12:07 大石山分岐〜12:13 発―12:50 ひど〜12:56 発―13:38 岩場―13:59 姫子の峰〜14:07 発―14:32 足の松尾根取付―15:02 奧胎内大橋―15:26 胎内ヒュッテ=(胎内 、〆切、紫雲寺、聖籠IC、R.7 経由)=17:20 新潟着

 奧胎内から始まる足の松尾根は、飯豊主稜線への新潟県側の最短コースとして良く利用されている。足の松尾根は大石山の西ピークに登り着き、北に向かえば杁差岳、南に向かえば頼母木山を経て、地神山、門内岳、北股岳に続いている。頼母木山付近の稜線は、緩やかな起伏を描き、花の季節には、高山植物の楽園が広がっている。

 残雪に彩られた飯豊のお花畑を見に行きたいと思っていたが、梅雨の間の晴の予報が得られないまま、7月も末になってしまった。いよいよ新潟方面にも梅雨明け宣言が出され、この海の日の祝日は、天候に恵まれそうであった。週末に秋田方面の山が入っていたため、体力の消耗は避けたかったのだが、晴天を眺めて後悔はしたくなく、山に出かけることにした。
 これまで、足の松尾根は二度登っているが、いずれも6月中旬に杁差岳をめざしたものであった。飯豊には毎年足を向けているといっても、5年ぶりの足の松尾根ということになった。足の松尾根を登り切った大石山から先は、北の杁差岳に行くか、南の主稜線を辿るか迷った。丸森尾根から地神山へ登ったことがあるが、大石山から地神山の区間がまだ歩いていなかった。コースタイムを計算すると、花を眺めながらの稜線歩きを楽しんだとして、地神山で折り返せば日帰りコースとして丁度良さそうであった。といっても、11時間程のコースタイムのため、未明から歩くことにして、前夜に登山口に入ることにした。
 胎内ヒュッテ前の駐車場に到着してみると、車は数台で、思ったよりも少なかった。祝日といっても、飯豊に日帰りで入る者は少ないようである。車の中で寝ていると、コノハズクの鳴き声がブナ林の中から聞こえてきた。目覚まし時計で目を覚まし、まだ暗い中を出発した。満月は少し過ぎたとはいえ、月明かりだけで充分歩くことができた。舗装された二車線幅の林道が続いた。以前は、砂利道であったのだが、いつの間に整備されたのやら。入り組んだ沢の部分は橋でショートカットしているため、以前よりは距離が短くなったことは確かである。
 20分程歩くと、右手に立派な橋がかかり、舗装はここまでとなった。帰りに銘板を読んでみると、奧胎内大橋と書かれていた。山奥でダムの工事が進んでいるようである。「以前の道はこうだったよなあ」と思いながら、ともすれば足の取られる未舗装の林道を、足の松尾根登山口まで進んだ。
 夜も明けてきて、汗もにじんできた。今日も暑い日になりそうだ。登山口でひと休みした後、登山道に足を踏み入れた。ブナ林に分け入ると、直ぐに急な登りが始まる。登山道は、木の根がむき出しになって、はなはだ歩きにくい。さらに、ロープが張られて歩き難くなっていた。登り口には、新潟大学工学部の岡本教授のお断りの張り紙が掲げられていた。岡本教授は、飯豊周辺の局地雨量の観測中で、保守のために幾つかのルートで、このように登山道を整備している。防災のための研究とあっては、遊びの登山者は、少々のことは我慢しよう。黒石山から二王子岳へのコースでは、この目的で整備された登山道を歩かせてもらっていることでもあるし。
 急登を続けて、姫子の峰でようやくひと息。歩き始めでその日の体調が判るが、早くも大汗をかいていた。そうスピードを上げるわけにはいかないようである。展望が開けた姫子の峰からは、頼母木山を中心とした主稜線を望むことができた。谷には残雪がまだ豊富に残っていた。
 姫子の峰からは、小さなアップダウンが続く。このコースの難所の下がえぐれている岩場の上を慎重に通過。暑さも厳しくなってきて、そろそろ水場と思いながら、先を急いだ。シーズン中は、登山道の脇までホースで水を引いてある。ところが、この水場は、まだ設けられていなかった。水は3リットルと充分に用意してきてあったが、冷たい水を期待していただけに、飲めないとなると、喉の乾きが余計に増した。
 残雪が遅くまで残るヒドを渡ると、ブナ林の中の急な登りが再び始まった。大石山の山頂部も目に入ってくるが、遙か頭上で、首に巻いたタオルを絞りながらの登りが続いた。谷向こうの鉾立峰が次第に目の高さまで下りてくると、登りもようやく終わりに近づいた。傾斜も緩やかになって、笹原の中をトラバース気味に登っていくと、大石山の分岐に到着。
 時間も早い事もあるが、誰もおらず、ガスが流れるだけの静かな山頂であった。地図によれば、大石山の山頂は、稜線を東に進んだ先の1567mピークということになっている。前二回の山行では、この分岐から杁差岳に向かってしまい、実際には、大石山の山頂は踏んでいなかったということになる。僅かな距離の問題であるが、地図を良くみるようになってから、気にかかっていた。
 花の飯豊を楽しみに登ってきたのだが、大石山の下りで、まずはヒメサユリがお出迎え。その先からは、ニッコウキスゲの群落が続いた。ガスが流れる中でも、黄色の色はとりわけ鮮やかに目に飛び込んできた。ハクサンイチゲやタカネナデシコ、クガイソウのお花畑を楽しみながら、緩やかに起伏する稜線をのんびりと歩いた。
 頼母木小屋に到着したところで、ガスが切れて、周囲の展望が広がった。残雪に彩られた杁差岳は、飯豊北端の重鎮に相応しくどうどうたる姿を見せていた。南には地神山が高く聳えていた。門内岳付近から主稜線を眺めた時には、なだらかな稜線が続いており、地神山を明確なピークとは認めなかっただけに、意外であった。ここから眺める地神山は、山行の最終目的地とするに相応しい山容を見せていた。
 ザックを下ろし、コップ片手にさっそく頼母木小屋の水場へ向かった。蛇口を捻ったが、水は出てこなかった。良く見ると、流しの周囲は乾ききっていた。ここにも水が来ていないとは。どっと暑さが堪えてきた。
 頼母木山に向かうと、左手の谷間の雪渓が、登山道脇まで迫ってきた。雪解けの際には、ハクサンコザクラのピンクの花が広がっていた。頼母木山の山頂へは、緩やかな登りではあったが、イイデリンドウのコバルトブルーの花が目に入り、写真撮影のために足が止まってしまった。頼母木山の山頂付近は芝状の草地が広がり、その中に、イイデリンドウの花が散らばっていた。
 地神山までは、100m程のそう急な登りという訳でもなかったが、そろそろ足も疲れてきた。地神山の北峰で、丸森尾根が合わさった。先回丸森尾根を登った時は、残雪で夏道を辿ることができず、高みを目指してがむしゃらに登ったところ、夏道の現れたこのピークにひょっこり飛び出して、胸を撫で下ろしたという思い出の場所である。飯豊の稜線の空白地点が繋がった。その先、痩せ尾根を辿ると、地神山に到着した。稜線は、この先ほとんど高低を示さずに続き、最後に北股岳の山頂に向かって上がっていく。時間を考えると、ここらが引き返しの地点のようである。昼近くになって、再びガスが出てきた。このガスは、夕方までは消えないであろう。
 昼休みは、頼母木山の下の雪渓の上ということにした。頼母木山付近で、南下する縦走グループや花の写真撮影の単独行に出会った。雪渓の上に腰を下ろし、少し迷ったが、誘惑に負けて、ビールの栓を抜いた。雪渓で冷やしながら飲むビールの味は格別であった。もっとも、下りの足が辛くなることは、覚悟する必要があったが。「ビールを冷やす雪も無い山は、山じゃねえ。」と独り言。
 二人連れが西俣峰への分岐方面から下ってきて、声を掛けられた。頼母木小屋の小屋番の人で、今年は雪解けが遅く、小屋まで水を引けないこと。水は、この雪渓の下の沢から取ることを教えられた。足の松尾根途中の水場も、残雪のために水が引けないでいることのことであった。(一週後に、同じコースを辿った鈴木眞さんの報告によれば、結局、7-月27日に頼母木小屋まで水が引けたようである。)水は充分に持っていたし、ビールで喉の乾きは癒されていたので、水汲みには行かなかった。
 大石山付近に戻ると、日帰りのグループにも多く出会うようになった。大石山までの日帰りは結構いるが、頼母木山までは足が伸びないようである。足の松尾根を下るに連れ、暑さが厳しくなってきた。この暑さの中、登りの途中でダウン寸前の登山者に多く出会った。途中の水場が無い事も堪えているようであるが、この暑さの中、この急登に耐える自信は私にも無い。夏の飯豊は、未明から歩き出して、日が昇った頃には、主稜線の上を散策しているのが一番。コースタイムの落とし穴だな。足場の悪い下りは、固定ロープをフルに利用させてもらった。
 下界は、猛暑になっていた。
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