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荒沢峰


【日時】 2000年3月4日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 曇り
【山域】 白山山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 荒沢峰・あらさわみね・688.2m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/加茂/越後白山
【ガイド】 LATERNE vol.5
【時間記録】 7:00 新潟発(R.49、茅野山IC、R.403、金津、丸田、中野橋、R.290、南田中、下大蒲原、上戸倉 経由)=8:10 林道入口〜8:20 発―8:36 尾根取り付き―9:35 372ピーク〜9:40 発―10:55 荒沢峰〜11:30 発―12:09 372ピーク―12:36 尾根取り付き―12:50 林道入口=(往路を戻る)=14:30 新潟着

 新潟平野の東端に位置し、古くからの信仰の山として知られている白山は、南に宝蔵山への稜線を連ね、権ノ神岳を経て粟ヶ岳に続いている。白山と宝蔵山の中間部にあたる890m点からは、城ノ入川と能代川に挟まれて、北西に長い尾根が派生し、烏帽子岳(820m)、荒沢峰(688.2m)を経て、下戸倉の城山に続いている。荒沢峰は、地形図には688.2mの三角点表示しかないが、藤島玄氏の「越後の山旅」にこの山名が記載されている。
 2月に城山を訪れた際に、下戸倉手前からの展望で、城山から緩やかに高まっていく尾根の先に聳えるピークに目が引きつけられた。それが荒沢峰であることに、地図への書き込みから知った。城山に登った後で、そのまま荒沢峰を目指そうかとの誘惑に惑わされたが、天気が悪かったのと、距離があるために新雪状態だとこのコースは歩けそうもなさそうに思って、ひとまず断念した。下山後、地図を見ながら荒沢峰のための偵察を行った。
 荒沢峰の記録を探してみると、峡彩ランタン会には、やはり登っている人がいた。佐藤一正さんが、烏帽子山を目指して、この荒沢峰の山頂を踏んでいた。上戸倉の一番奥の神社裏手の尾根から取り付いて314ピークを経由する尾根を登っている。
 山を見上げると、中腹を送電線が横切っており、各尾根に鉄塔が見えた。能代川沿いに尼池山との間の谷間に入った所から始まる尾根の372ピークの上には鉄塔が立っており、この尾根の走り具合を下からも良く眺めることができた。距離も短く、傾斜も適当なので、この尾根を使うことにした。
 早めに寝たのだが、目覚ましのセットを忘れるといううっかりミス。午後からは雨という予報が出ていた。烏帽子山は無理として、荒沢峰だけでも登ろうと、山に向かった。下戸倉手前で車を停めて、荒沢峰の写真を撮った。ここからの荒沢峰の姿は、周囲に尾根を下して、白山に引けを取らない堂々とした姿を見せている。もっとも、下戸倉に用ができることはまずないと思うので、低山巡りで城山を訪れて、この山を知ることができたのは幸運であった。上戸倉の集落を過ぎ、県道出戸・村松線が能代川を横切る手前の除雪帯に車を停めた。尼池山との間の谷間に入っていく林道が、雪で覆われていたが、この前から始まっていた。地図では、橋の脇の134点から林道が始まるように書いて有るが、実際には、上戸倉の集落に少し戻った所から始まっている。
 昨日は春の訪れを告げる暖かい陽気になったが、そのためか、雪もグズグズになっており、歩き出しからワカンを履く必要があった。橋の脇の田圃からワカンの踏み跡が林道に上がってきた。ひとつ尾根を見送って、谷の奥に進んだ。左手に小さな谷間が広がり、そこから流れ出る沢を渡った所が、目指す尾根の取り付きであった。ワカンの跡は、さらに先に続いていた。期待していた、送電線巡視路の標識はここには無かった。あるいはもう一つ次の枝尾根に沿ってあるのかもしれないが、林道をさらに先に進むのは、この雪の状態では面倒であった。杉林の中をひと登りして、尾根の上にのった。尾根の北側斜面は伐採地になっており、尾根の上まで潅木の枝がはびこってきていた。歩くに連れて枝が体に触れるものの、薮コギという程のことはなかった。ただ、この尾根には巡視路は切られていないことは確かであった。谷向こうに延びる尾根の上に立つ送電線の鉄塔を眺めては、どれくらい登ってきたかを判断することができた。右手から尾根が合わさってきた所で、送電線の鉄塔が目に入ってきた。大きな鉄塔で、どうも白山登山道の尾根線の三合目下を走っているものと同系列のようであった。鉄塔は、北西から合わさる尾根の372ピークより少し下がった所に立てられていた。
 372ピークからは、荒沢峰の頂上を望むことができた。そう遠くはない距離であった。その右手に半分顔をのぞかせているのは、宝蔵山のようであった。372ピークの南側斜面は若い杉の植林地になって、尾根が伐採の境界線になっていた。372ピークから僅かに下った後に、植林地と雑木林の境界線を登った。右手からの尾根を合わせると、尾根が広がって、美しい林の中の登りになった。ナラにブナが所々混じる比較的若い木の林であったが、下生えは少なく、木の間隔が空いているため、森林公園といった風な明るい感じがした。念のために赤布を付けてはいたものの、雪は柔らかくてワカンの跡ははっきりとついていたため、帰りの心配はそういらなかった。春が近づいて、木の芽も膨らみ、マンサクの花の蕾を見ると、開くのも時間の問題のようであった。ウサギやカモシカの足跡も多く見られて、山の動物達も春が近づいて活動も活発になってきているのかもしれない。幅広の斜面を上に向かって登っていくと、南西尾根の合流点に出て、展望が広がった。荒沢峰の山頂は、尾根を少し巻いて進んだ少し先の高まりで、あとひと登りであった。山頂からの展望を楽しみに先を急いだ。
 荒沢峰の山頂は、雪で覆われた小広場となって、上戸倉の集落や新津丘陵方面の眺めが広がっていた。烏帽子岳に続く稜線に進むと、白山方面の遮るもののない展望が広がった。目の前に、宝蔵山、烏帽子岳、白山が横一列に並んでいた。白山の山頂も谷を挟んで目の前で、先週苦労して登った尾根の全てを目で追うことができた。雪の上に腰を下ろして、眺めを楽しんだ。
 烏帽子岳までは、一旦下った後に、さらに登りを続ける必要があった。途中の尾根には雪庇が張り出しており、山頂直下は急斜面の雪原となり、雪の状態が心配であった。時計を眺めて、烏帽子岳は今回は諦めることにした。荒沢峰だけでも、この展望を楽しむために登る価値があるというもの。地図にも名前が書かれていないピークであるが、少し山慣れした者なら、雪を使って登るのにそう難しくはないのに、もったいないことである。
 昼から雨との予報が出ており、空の雲も心持ち明るさを失ってきたような気配がしてきた。烏帽子岳への誘惑を打ち払って下山することにした。心残りの山として、登った時の感動を大きくすることにしよう。
 雪玉と一緒に雪原を下るような気持ちの良い歩きが続き、鉄塔までは、僅かな時間であった。その先の尾根は、ヤブがややうるさかった。次回は送電線の巡視路を期待して別な尾根をあたった方が良いかもしれない。
 下山後、下戸倉の先で荒沢峰を振り返った。荒沢峰は、眺めても、登っても、良い山であった。白山が主役とすれば、宝蔵山は助演級、荒沢峰は名脇役といったところか。名脇役に囲まれてこそ、山は奥行きを増す。山が好きなら、是非これらの名脇役にも目を配ってはみようではないか。降り出した雨の中を家に向かった。
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